ここ数年、クレーンにも「電動化」の波が来ています。エンジンの代わりにモーターとバッテリーで動くクレーンや、現場の電源につないで作業できるクレーンが、国内メーカーから次々に発売されています。
理由はおもに3つです。
- CO2を減らしたい:建設会社や発注者が、現場から出るCO2の削減目標を立てるようになった
- 静かにしたい:住宅地や病院のそば、夜間の工事では、エンジン音が問題になりやすい
- 排気ガスを出したくない:屋内や地下、トンネルの中ではエンジンの排気ガスが使いにくい
この記事では、
- 電動化クレーンの4つのタイプ
- 国内メーカーの主な機種(2026年10月時点)
- ひと目で分かる比較表
- 導入するときに気をつけたいこと
を順に紹介します。
※この記事の発売時期・性能・価格は、2026年10月時点で各メーカーが発表している内容をもとにしています。仕様や価格は変わることがあるので、最新の情報は各メーカーの製品ページで確認してください。
電動化クレーンの4つのタイプ

ひとくちに「電動クレーン」といっても、どこまで電気で動くかは機種によって違います。大きく分けると次の4つです。
| タイプ | しくみ | 走行 | クレーン作業 |
|---|---|---|---|
| ① フル電動(バッテリー式) | 大きなバッテリーを積み、走行もクレーン作業もモーターで行う | 電気 | 電気 |
| ② 作業だけ電動(電源ユニット式) | 走行はエンジン。クレーン作業のときだけ、外部電源やバッテリーユニットで油圧ポンプを動かす | エンジン | 電気(エンジンも使える) |
| ③ ハイブリッド | エンジンとモーターを組み合わせ、燃料を減らす | エンジン+モーター | エンジン+モーター/電気 |
| ④ 有線電動 | 現場の電源設備から電線で電気をもらって動く。バッテリーは積まない | (機種による) | 電気 |
移動式クレーンの多くは、エンジンで油圧ポンプを回し、その油の力でブームを伸ばしたりワイヤロープを巻いたりしています。②のタイプは、この油圧ポンプを回す役目だけをエンジンからモーターに置きかえる考え方です。クレーンの基本的なしくみを大きく変えずに、作業中のCO2と騒音を減らせるのが特長です。


国内メーカーの主な電動化クレーン
タダノ「EVOLT eGR-250N」|世界初のフル電動ラフテレーンクレーン

タダノが2023年12月8日に日本で発売した、走行もクレーン作業もバッテリーとモーターで行う25トン吊りのラフテレーンクレーンです。タダノは「世界初のフル電動ラフテレーンクレーン」としています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイプ | ① フル電動 |
| 最大つり上げ荷重 | 25t |
| バッテリー | リチウムイオン電池(合計226kWh) |
| 満充電での目安 | クレーン作業約5時間+走行約42km(クレーン作業だけなら約11時間、走行だけなら約70km) |
| 充電時間 | 急速充電(CHAdeMO)約2.5時間/普通充電(三相AC200V)約8時間 |
| 価格(発売時) | 1億4,800万円(税別、装備により異なる) |
タダノによると、もとになったディーゼルの「GR-250N」は1台で年間約27トンのCO2を出していて、それをゼロにできるとしています。現場で電源につないだままクレーン作業をすることもできます。
ゼネコンの現場でも使われはじめていて、竹中工務店の大阪市内の現場や、長谷工コーポレーションの横浜市内のマンション現場で、トラブルなく稼働したとタダノが発表しています。

タダノ「e-PACK」|エンジンを止めてクレーン作業ができる電源ユニット
タダノの「e-PACK」は、クレーン作業のときだけ電気で油圧ポンプを動かすためのユニットです(②のタイプ)。エンジンをかけずに作業できるので、作業中のCO2はゼロになり、騒音も下がります。
- 有線式e-PACK:2022年に25トンクラスのラフテレーンクレーン向けに発売。現場の三相AC200V/220Vの電源につないで使います
- バッテリ式e-PACK:2026年1月21日発売。70トンクラスのラフテレーンクレーン「CREVO700 G5」に組み合わせ、現場に電源がなくても電気でクレーン作業ができます
バッテリ式e-PACKについて、タダノは次のように発表しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイプ | ② 作業だけ電動 |
| 組み合わせるクレーン | CREVO700 G5(GR-700N、最大つり上げ荷重70t) |
| 作業時間の目安 | 平均的な1日分の作業に相当、最大約8時間(バッテリー交換で作業を続けることもできる) |
| 騒音 | 107.0dB → 96.1dB(タダノ発表の比較値) |
| CO2 | エンジンで作業した場合の年間約21,400kgがゼロに |
| 価格(発売時) | バッテリ式e-PACK 5,150万円/GR-700N(e-PACK仕様)1億400万円(いずれも税別) |
長崎県の本明川ダムの工事で初めて稼働したことも発表されています。
加藤製作所「SR-250HV」|ハイブリッドラフター+外部電源ユニット
加藤製作所(KATO)が2025年2月に発売した、25トン吊りのハイブリッド式ラフテレーンクレーンです。メーカーは「世界初」としています。
- 走行:ディーゼルエンジンと電動モーターを組み合わせたハイブリッド。ブレーキをかけたときのエネルギーをバッテリーにためて、発進のときに使います。現場の中をゆっくり移動するときは、モーターだけで走ることもできます
- クレーン作業:標準でついてくる外部電源油圧供給ユニット「EK-UNIT」を現場の電源(三相AC200〜240V)につなぐと、電気だけでクレーン作業ができます。電源がない現場では、エンジンで作業します
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイプ | ③ ハイブリッド + ② 作業だけ電動 |
| 最大つり上げ荷重 | 25t(ジブ使用時の最大地上揚程44.6m) |
| EK-UNIT | 定格出力58kW、質量約2,000kg、三相AC200〜240V |
| CO2 | 走行時は同クラスのエンジン機より最大約40%減(定地定速走行)。再生可能エネルギー由来の電気でEK-UNITを使えば、作業時は実質ゼロ |
| 価格(発売時) | 7,380万円〜(税別、装備により異なる) |
コベルコ建機「Mastertech7200G NEO CleAir」|有線電動のクローラクレーン

コベルコ建機が2026年6月15日に発売した、200トン吊りの有線電動クローラクレーンです(④のタイプ)。同社にとって初めての電動クレーンです。
クローラクレーンは、一度組み立てると同じ現場に長くとどまり、あまり移動しません。そこでコベルコ建機は、バッテリーを積むのではなく、現場の電源設備から電線で直接電気をもらう方式を選びました。充電や給油で作業が止まらず、バッテリーの残量で性能が落ちることも、バッテリー交換もありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイプ | ④ 有線電動 |
| 最大つり上げ能力 | 200t × 5.0m |
| 電源 | 現場の汎用給電設備(キュービクル、400V・800A)から受電。新しい給電設備は不要 |
| モーター | 定格出力274kW |
| CO2 | 年間35.6トン削減(エンジン機の年間軽油消費量13,800Lをもとにした計算) |
| 騒音 | 超低騒音型建設機械の基準値(101dB以下)をクリア |
| 価格(発売時) | 5億2,300万円(税別) |
ベースは2021年に発売された「Mastertech7200G NEO」で、エンジン機と同じつり上げ能力と作業効率をもつとしています。
小さなクレーンはバッテリー式が先行|かにクレーン・ミニクローラクレーン

屋内や地下で使うことが多いかにクレーン(ミニクローラクレーン)は、大型機よりも早くから電動化が進んでいます。排気ガスが出せない場所での仕事が多いからです。
前田製作所「MC285CB-3」(2020年9月発売)
- 2.82トン吊りのかにクレーンで、リチウムイオン電池で動く完全電動式
- 1回の充電で約9時間30分のクレーン作業ができる
- 充電はAC200Vで80%まで約2時間20分、100%まで約3時間30分。AC100Vからも充電できる
古河ユニック「URW295CB3」
- 2.93トン吊りのミニ・クローラクレーンで、バッテリーユニットで動く完全電動式
- クレーン作業中に排気ガスが出ず、待機中はモーターが止まって無音になる
- 古河ユニックは2025年4月にミニ・クローラクレーンシリーズの改良版を発売し、ディーゼル、ディーゼル+電動のハイブリッド(機種名の末尾が「M」)、バッテリー駆動(末尾が「B」)の3つの動力から選べるようにしています
これから出てくる機種
タダノは、EVトラックに電動のカーゴクレーン(トラック搭載型クレーン)を載せた「EVOLT 電動カーゴクレーン」を、2026年6月の展示会(CSPI 2026)で正式発売前の製品として出展しました。2026年10月時点で、発売日や性能はまだ発表されていません。
ひと目で分かる比較表
| メーカー・機種 | 種類 | タイプ | つり上げ | 発売 |
|---|---|---|---|---|
| タダノ EVOLT eGR-250N | ラフテレーンクレーン | ① フル電動 | 25t | 2023年12月 |
| タダノ CREVO700 G5+バッテリ式e-PACK | ラフテレーンクレーン | ② 作業だけ電動 | 70t | 2026年1月 |
| 加藤製作所 SR-250HV | ラフテレーンクレーン | ③ ハイブリッド+② | 25t | 2025年2月 |
| コベルコ建機 Mastertech7200G NEO CleAir | クローラクレーン | ④ 有線電動 | 200t | 2026年6月 |
| 前田製作所 MC285CB-3 | かにクレーン | ① フル電動 | 2.82t | 2020年9月 |
| 古河ユニック URW295CB3 | ミニ・クローラクレーン | ① フル電動 | 2.93t | ※ |
※古河ユニックのバッテリー駆動モデルの初めての発売時期は、公式発表で確認できていません(2025年4月にシリーズの改良版を発売)。
大型のクローラクレーンは「有線」、公道を走るラフテレーンクレーンは「フル電動」と「作業だけ電動」、小型のかにクレーンは「バッテリー式」と、クレーンの使われ方に合わせて電動化の方法が分かれているのが分かります。
導入するときに気をつけたいこと
電動化クレーンは静かで排気ガスも出ませんが、エンジン機と同じ感覚では使えない点もあります。
- 電源の段取り:有線式や外部電源式は、現場に必要な電圧・容量の電源があるかを事前に確認する必要があります。コベルコ建機のCleAirは400V・800Aのキュービクル、加藤製作所のEK-UNITやタダノの有線式e-PACKは三相200V級の電源を前提としています
- 充電の計画:バッテリー式は、1日の作業量と充電時間をあわせて計画します。フル電動ラフターは走行でも電気を使うので、現場までの距離も関係します
- ケーブルの取り回し:有線式は、ケーブルを踏んだり、ほかの重機がひっかけたりしないよう、通り道や養生を考えておく必要があります
- 静かさゆえの注意:エンジン音がしないぶん、周りの人がクレーンの動きに気づきにくくなることがあります。合図や立入禁止の措置は、エンジン機と同じかそれ以上にしっかり行います
- 価格:発売時の価格を見ると、同じクラスのエンジン機より高めです。補助金の対象になっているかどうかは、時期や制度によって変わるので、メーカーや販売店に確認するとよいでしょう
※電気系統の点検や充電の方法は機種ごとに違います。必ずその機械の取扱説明書に従ってください。

まとめ
- 電動化クレーンは、フル電動・作業だけ電動・ハイブリッド・有線電動の4つのタイプに分けると分かりやすい
- ラフテレーンクレーンでは、タダノのEVOLT eGR-250N(フル電動、25t)、バッテリ式e-PACK(70tクラスと組み合わせ)、加藤製作所のSR-250HV(ハイブリッド、25t)が発売されている
- クローラクレーンでは、コベルコ建機が有線電動のMastertech7200G NEO CleAir(200t)を2026年6月に発売した
- かにクレーンやミニクローラクレーンは、バッテリー式がすでに広く選べる
- 導入するときは、電源・充電・ケーブルの段取りを先に考えておくことが大切
国内のクレーンメーカーそれぞれの得意分野は「国内の移動式クレーンメーカー6社を紹介」で、クレーンの種類については「クレーンの種類を地上・海上別に解説」で紹介しています。


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