中古クレーン市場のしくみ|売る前・買う前に知っておきたい値段の決まり方と手続き

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はじめに

クレーンは1台数千万円から、大型になれば億を超える機械です。そのため、新車で買って乗りつぶすだけでなく、中古として売り買いされることがとても多い機械でもあります。

会社の代替えで手放した25tラフターが、数年後に海外の港で働いている。そんなことも珍しくありません。

この記事では、

  • 中古クレーンはどこへ流れていくのか
  • 値段はどこで決まるのか
  • 売るとき・買うときに必要な書類と手続き

を、クレーンの現場目線でまとめます。

中古クレーンはどこへ行く?

手放されたクレーンの行き先は、大きく分けて3つあります。

中古クレーンの行き先の図:いまの持ち主から販売店・オークションを経て、国内の別会社・レンタル会社・海外輸出へ

① 国内の別の会社へ

いちばん身近なのが、国内の別のクレーン会社や建設会社に引き継がれるパターンです。小型のラフターや、ユニック(クレーン付きトラック)は国内での需要も根強く、中古販売店やオークションを通じて次のオーナーに渡ります。

② レンタル会社の入れ替え

レンタル会社は、一定の年数で機械を入れ替えます。入れ替えで出た機械は中古市場に出ていきます。建設機械全体では、レンタル会社経由の機械は平均5年ほど、下取り業者経由の機械は平均10年ほど使われてから輸出されるという分析もあります(三井住友銀行のレポート、油圧ショベルの例)。

③ 海外へ輸出

日本の中古建機の大きな行き先が海外です。前述のレポートでは、油圧ショベルだけで年2〜5万台が輸出され、行き先は中国・ベトナム・タイ・マレーシア・フィリピンなどとされています。

クレーンについても、買取業者は中東・東南アジア・アフリカのインフラ工事向けの需要が強いと説明しています。年式が古くても、タダノ製や加藤製で動作が良好な車両は評価されやすい、というのが業者側の見立てです。

国内でひと仕事を終えたクレーンが、海外で第二の人生を送る。中古市場は、そういう循環の入口でもあります。

値段はどこで決まる?

中古クレーンの値段は、車と同じく「年式」と「走行距離」だけでは決まりません。クレーンならではの見どころがあります。

吊り上げ能力(クラス)

いちばん大きいのはクラスです。10t、16t、25t、50t…と、能力が大きいほど元の値段も中古の値段も高くなります。国内外で使い道の多い25t前後のラフターは、とくに引き合いが強いクラスとされています。

年式と稼働時間

年式が新しいほど高いのは当然ですが、クレーンは走行距離よりも稼働時間(アワーメーター)が重視されます。現場で長時間アイドリングしていた機械は、距離が短くてもエンジンや油圧が疲れていることがあるからです。

ある買取業者の公表している目安では、25t級ラフターの場合、10年以内なら数百万〜2,000万円程度、20年を超えると100万〜400万円程度まで下がるとされています。あくまで業者の目安で、状態や市況で大きく変わります。

ブーム・ワイヤロープ・フック

クレーンらしい査定ポイントがここです。

  • ブーム:伸縮がなめらかか、曲がり・へこみ・腐食がないか。ブームの変形は大きな減額につながります
  • ワイヤロープ:素線切れ、摩耗、キンク(よじれ)。交換が必要なら、その費用分が差し引かれます
  • フック・シーブ:口の開き、摩耗、外れ止めの状態

ワイヤロープの交換基準は「ワイヤロープ点検と交換」で詳しく解説しています。

安全装置と書類

過負荷防止装置(モーメントリミッタ)などの安全装置がきちんと動くか、そして書類がそろっているかも大きなポイントです。次の章で詳しく見ていきます。

メーカー

国内ではタダノの評価が高く、部品の手に入りやすさも含めて、同じクラスでも高めの値がつきやすいと言われます。加藤製作所の大型機は海外で人気がある、という声もあります。

売る・買うときの書類と手続き

中古クレーンの売買で、車とちがうのがここです。吊り上げ荷重3t以上の移動式クレーンには「移動式クレーン検査証」があり、法律で扱いが決まっています。

検査証はクレーンと一緒に渡す

労働安全衛生法 第40条第2項では、検査証を受けた機械は「検査証とともにするのでなければ、譲渡し、又は貸与してはならない」とされています。売るときは、検査証も必ず一緒に引き渡します。

新しいオーナーは10日以内に「書替え」

クレーン等安全規則 第59条では、移動式クレーンを設置している者(持ち主)が変わったとき、異動後10日以内に、所轄の労働基準監督署長へ検査証の書替えを申請することになっています。買った側が忘れがちな手続きなので注意しましょう。

検査証の有効期間は2年

移動式クレーン検査証の有効期間は原則2年です(クレーン則 第60条)。期限が近い機械は、買ったあとすぐに性能検査を受ける必要があります。有効期間がどれだけ残っているかは、値段にも響くポイントです。

解体・輸出で使わなくなったら「返還」

国内で使うのをやめるとき(解体する、輸出するなど)は、遅滞なく検査証を所轄の労働基準監督署長に返還します(クレーン則 第93条)。吊り上げ荷重を3t未満に変更したときも同じです。

車としての手続きも別に必要

ラフターやオールテレーンは自動車でもあるので、検査証とは別に、ナンバーの名義変更や、輸出するときの抹消登録など、陸運局での手続きも必要です。

検査や届出の全体像は「移動式クレーンの検査と届出」にまとめています。

「特定自主検査」ではなく「年次自主検査」

中古クレーンの販売・買取サイトでは、「年1回の特定自主検査」と書かれていることがあります。ですが、移動式クレーンは特定自主検査の対象ではありません。移動式クレーンに義務づけられているのは、クレーン則にもとづく年次・月次の定期自主検査と、作業開始前の点検です。

(特定自主検査は、油圧ショベルなどの車両系建設機械やフォークリフトなどが対象です。詳しくは「クレーンのアタッチメント図鑑」で触れています。)

点検記録がきちんと残っている機械は、前のオーナーがどう扱ってきたかがわかるので、買う側にとって安心材料になります。

中古クレーンを買うときのチェックポイント

  1. 検査証の有効期間と、書替えの段取り
  2. 定期自主検査の記録(年次・月次)と整備記録
  3. 実機での動作確認:ブームの伸縮・起伏、旋回、巻上げ、アウトリガ、安全装置
  4. ワイヤロープとフックの状態
  5. 定格総荷重表・取扱説明書がそろっているか(読み方は「定格総荷重表の読み方」)
  6. 納車前整備の内容と、買ったあとのサポート

遠方の機械を買う場合も、できれば動画で動作を確認させてもらいましょう。

中古クレーンを売るときのコツ

  • 書類をそろえておく:検査証、車検証、点検・整備記録、取扱説明書、定格総荷重表
  • 型式・製造番号・稼働時間を控えておく:電話での概算査定がスムーズになります
  • 複数の業者に見てもらう:国内販売に強い業者、輸出ルートに強い業者で評価が分かれることがあります
  • 動かない機械でもあきらめない:不動車や古い機械でも、部品取りや輸出向けに値がつくことがあります
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まとめ

  • 中古クレーンは、国内の別会社・レンタルの入れ替え・海外輸出という流れで次の現場へ渡っていく
  • 値段はクラス・年式・稼働時間に加えて、ブーム・ワイヤ・フックの状態と書類で大きく変わる
  • 吊り上げ3t以上なら、検査証は一緒に渡す(安衛法40条2項)、持ち主が変わったら10日以内に書替え(クレーン則59条)、使わなくなったら返還(同93条)
  • 移動式クレーンは特定自主検査ではなく、定期自主検査の対象

1台のクレーンは、持ち主を変えながら長く働き続けます。次に中古車の広告でクレーンを見かけたら、その機械がどんな現場を渡ってきたのか、想像してみてください。

参考にした資料

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