「クレーンの運転手じゃなくても資格がいるの?」「玉掛けって何をする仕事?」という疑問に答えるために、この記事では玉掛けの資格と、講習で学ぶ内容、現場で守りたい基本をまとめます。
玉掛けとは
玉掛けとは、クレーンで吊る荷にワイヤロープやスリングを掛けて、フックに掛け、目的の場所に下ろしたあとに外すまでの作業のことです。クレーンの運転と同じくらい事故につながりやすい作業で、荷の落下や、荷とほかの物との間にはさまれる事故の多くが、玉掛けの場面で起きています。
そのため玉掛けの作業には、クレーンの運転とは別に資格が必要です。運転手が自分で玉掛けをする場合でも、玉掛けの資格がなければ作業できません。
必要な資格はクレーンの能力で決まる
玉掛けの資格は、実際に吊る荷の重さではなく、使うクレーンのつり上げ荷重で決まります(クレーン等安全規則 第221条・第222条)。
| クレーンのつり上げ荷重 | 必要な資格 |
|---|---|
| 1トン以上 | 玉掛け技能講習の修了など |
| 1トン未満 | 玉掛けの業務に係る特別教育 |
この区分は、固定式クレーン、移動式クレーン、デリックに共通です。たとえば25トン吊りのラフターで200キロの荷を吊る場合でも、クレーンが1トン以上なので玉掛け技能講習が必要です。建設現場のクレーンはほぼすべて1トン以上なので、現場で玉掛けをするなら技能講習の修了が前提と考えておきましょう。
玉掛け技能講習の流れ
玉掛け技能講習は、都道府県労働局に登録した教習機関で受講します。受講できるのは満18歳以上の人です。
標準のコースは3日間で、学科が2日、実技が1日です。クレーン・デリック運転士免許や、小型移動式クレーン運転技能講習などを持っている人は、一部の科目が免除されて短くなることがあります。小型移動式クレーン運転技能講習とセットで受けられる教習機関も多く、ユニック車の仕事に就く人はこの組み合わせで取ることがよくあります。
学科で学ぶこと
- クレーンなどに関する知識(クレーンの種類や、安全装置のしくみ)
- 玉掛けに必要な力学(荷の重さの求め方、重心、つり角度と力の関係)
- 玉掛けの方法(用具の選び方、掛け方、合図)
- 関係法令
実技で学ぶこと
- 実際の荷とワイヤロープを使った玉掛けの方法
- クレーンの運転者への合図の出し方
学科・実技とも最後に修了試験があり、合格すると修了証が交付されます。修了証は、現場で資格の確認を求められたときに見せられるよう、携帯しておきましょう。
現場で守りたい玉掛けの基本
講習で学ぶ内容のうち、現場で特に大切な基本を紹介します。
つり角度が広がるほどロープにかかる力は増える
2本のワイヤロープで荷を吊るとき、ロープどうしが開く角度(つり角度)が大きいほど、1本のロープにかかる力は大きくなります。
| つり角度 | 1本にかかる力(真上に吊る場合を1とした倍率) |
|---|---|
| 0度 | 1.00倍 |
| 60度 | 約1.15倍 |
| 90度 | 約1.41倍 |
| 120度 | 2.00倍 |
120度まで開くと、1本のロープに荷の重さと同じだけの力がかかります。ロープが短いと角度は自然に広がってしまうので、つり角度は60度以内を目安にし、足りなければ長いロープに替えるのが基本です。
用具は使う前に毎回確かめる
玉掛け用のワイヤロープは、安全係数6以上のものを使うことが決まっています(クレーン等安全規則 第213条)。また、次のようなワイヤロープは使ってはいけません(同 第215条)。
- ひとよりの間で素線の10%以上が切れているもの
- 直径の減少が公称径の7%を超えるもの
- キンク(よじれによる折れ曲がり)したもの
- 著しい形くずれや腐食があるもの
作業を始める前に、ワイヤロープやスリング、シャックルに傷や変形がないかを目で見て確かめましょう。ワイヤロープの点検方法はワイヤロープの点検と交換で詳しく紹介しています。
地切りで一度止める
荷を吊り上げるときは、荷が地面から少し離れたところ(地切り)で一度止め、荷のバランスやロープの掛かり具合、クレーンの様子を確かめます。荷が傾いていたら、いったん下ろして掛け直します。そのまま吊り上げてしまうと、空中で荷が滑ったり回転したりして、とても危険です。
吊り荷の下には入らない
どれだけ確実に玉掛けをしても、吊り荷の下に入らないことは鉄則です。荷を誘導するときは、介錯ロープ(荷に取り付けた誘導用のロープ)を使い、荷から距離をとって操作します。
合図は運転者との共通言語
移動式クレーンの作業では、運転者から荷や玉掛けの人が見えない場面がよくあります。そのとき、運転者が頼りにするのは合図だけです。合図を出す人は1人に決め、決められた方法で、はっきり出すことが大切です。無線を使う現場でも、言葉の決まりをそろえておかないと、思わぬ動きにつながります。
よくある質問
玉掛け技能講習の修了証に有効期限はありますか?
技能講習の修了証そのものに有効期限はありません。ただ、法令や用具は変わっていくので、会社によっては数年ごとに安全教育を受け直す仕組みを設けています。
クレーンの運転免許を持っていれば玉掛けもできますか?
できません。運転の資格と玉掛けの資格は別です。運転免許を持っている人は講習の一部が免除される場合があるので、教習機関に確認してみてください。
玉掛けの資格は仕事探しに役立ちますか?
クレーンを使う現場は、建設だけでなく工場や倉庫、港湾など幅広くあります。玉掛けはその多くで必要になる資格なので、持っていると仕事の幅が広がります。クレーンの仕事についてはクレーンの魅力もあわせてご覧ください。
まとめ
玉掛けの資格は、使うクレーンのつり上げ荷重で決まり、1トン以上なら玉掛け技能講習が必要です。講習は標準3日間で、学科で力学や用具の知識を、実技で掛け方と合図を学びます。
現場では、つり角度を広げすぎないこと、用具を毎回点検すること、地切りで一度止めること、吊り荷の下に入らないことが基本です。実際の講習日程や受講料、免除の条件は、各地の登録教習機関に確認してください。


コメント