クレーンの種類を地上・海上別に解説|荷重別の検査と必要な資格

クレーンの種類 地上と海上(Crane-Info アイキャッチ) 資格・免許

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「ラフタとオールテレーンは何が違うの?」「海の上で使うクレーンにも車検のような検査はあるの?」「何トンから免許が必要なの?」という疑問に答えるために、この記事ではクレーンの種類を地上と海上に分けて紹介し、吊り上げ荷重(つり上げ荷重)ごとに必要な検査と資格を整理します。

クレーンのルールは、主に「労働安全衛生法」と、その下にある「労働安全衛生法施行令」「クレーン等安全規則(クレーン則)」で決まっています。数字の区切りが多くて混乱しやすいので、表を見ながら全体をつかんでください。

※この記事は制度の概要を紹介するものです。実際の運転・作業・検査の判断は、必ず最新の法令を確認し、事業者(勤務先)、労働基準監督署、講習機関などに確認してください。

そもそも「クレーン」と「移動式クレーン」はどう違う?

法令では、クレーンは大きく「クレーン(固定式)」と「移動式クレーン」に分かれます。労働安全衛生法施行令 第1条第8号は、移動式クレーンを「原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるクレーン」と定めています。

  • クレーン(固定式):工場の天井クレーン、門形(橋形)クレーン、ビル建設のタワークレーン(ジブクレーン)など、決まった場所に据え付けて使うもの
  • 移動式クレーン:ラフターやクローラクレーンのように、自分で好きな現場へ移動できるもの

工場の天井クレーンなどの固定式は、このサイトのテーマではないので軽く触れるだけにして、ここからは移動式クレーンを中心に見ていきます。

クレーン(固定式)と移動式クレーンの違い

地上で使う移動式クレーンの種類

アウトリガーを張り出して作業する黄色いホイール式移動式クレーンを真上から見た様子
Elliott Ledain
地上で使う主な移動式クレーン(ラフター・オールテレーン・クローラ・積載形・ミニクローラ)

トラッククレーン

トラックと同じようなキャリア(走行用の車体)にクレーンを載せたものです。走行用の運転席と、クレーン操作用の運転室が別々になっているのが特徴です。公道を走って現場に向かえます。ただし、いまの国内の現場ではラフテレーンクレーンとオールテレーンクレーンが中心で、トラッククレーンを見かけることはほとんどなくなりました。

ラフテレーンクレーン(ラフタ)

1つの運転室で走行もクレーン操作もできる、ホイール式の移動式クレーンです。小回りが利き、でこぼこした不整地にも強いため、日本の建設現場で最もよく見かけるタイプです。現場では「ラフタ」「ラフター」と呼ばれます。

オールテレーンクレーン

公道を高速で走る性能と、不整地での走破性を両立させた大型のホイール式クレーンです。走行用とクレーン用の運転室が別になっていて、大きな吊り上げ能力を持つ機種が多く、風力発電や大型の建設工事で活躍します。

クローラクレーン

キャタピラ(クローラ)で走る移動式クレーンです。地面との接地面が広く安定しているため、重い物を吊るのに向いています。基本的に公道は走れないので、分解してトレーラで運び、現場で組み立てます。

積載形トラッククレーン(ユニック車)

トラックの運転席と荷台の間にクレーンを取り付けたものです。荷物を自分で積み降ろしできるので、資材の配送などに欠かせません。古河ユニックの製品名から「ユニック車」と呼ばれることが多く、タダノの製品は「カーゴクレーン」とも呼ばれます。

かにクレーン(ミニ・クローラクレーン)

4本の脚をカニのように広げて車体を支える、小型のクローラクレーンです。建物の中や狭い場所でガラスや設備を吊るときに使われます。「かにクレーン」は前田製作所の製品名が広まった呼び方です。

海上で使うクレーンの種類

浮きクレーン(起重機船・クレーン船)

台船(船の形をした浮体)にクレーンを据え付けたもので、法令上は移動式クレーンの一種です。厚生労働省が作成した小型移動式クレーン講習用の用語集でも、トラッククレーンなどと並んで「浮きクレーン」が挙げられています。橋の架設、港湾工事、大型ブロックの据付けなどで使われ、数千トン級を吊るものもあります。現場では「起重機船」「クレーン船」「フローティングクレーン」とも呼ばれます。

SEP船などの作業船

SEP船(自己昇降式作業台船)は、脚(レグ)を海底に下ろして船体を海面から持ち上げ、揺れの少ない状態で作業できる船です。洋上風力発電の風車の設置などで、大型クレーンを載せて使われます。台船の上に陸上用のクローラクレーンを載せて作業する方法もあります。

船舶に設けられたクレーン(揚貨装置)

貨物船などに取り付けられ、港で荷物を積み降ろしするクレーンやデリックを、法令では「揚貨装置」と呼びます。安全衛生技術試験協会は、揚貨装置を「船舶に設置されたデリックやクレーン設備」と説明しています。

海上で使うクレーン(浮きクレーン・SEP船・揚貨装置)

クレーンの種類一覧表

区分種類主な特徴・用途
地上・移動式トラッククレーン走行用とクレーン用の運転席が別。現在の国内ではほとんど見かけない
地上・移動式ラフテレーンクレーン1つの運転席で走行と操作。不整地に強く現場の主力
地上・移動式オールテレーンクレーン公道走行と不整地走行を両立。大型が中心
地上・移動式クローラクレーンキャタピラで安定。大型は分解して輸送
地上・移動式積載形トラッククレーン(ユニック車)トラックに搭載。荷物の積み降ろし
地上・移動式かにクレーン(ミニ・クローラ)小型で狭い場所や屋内に強い
地上・固定式天井クレーン、タワークレーンなど決まった場所に据え付けて使う
海上浮きクレーン(起重機船)台船と一体のクレーン。法令上は移動式クレーン
海上SEP船など作業船のクレーン洋上風力などの大型据付け
海上揚貨装置船に設けた荷役用のクレーン・デリック

吊り上げ荷重ごとに必要な検査と手続き

クレーンの検査や届出は、「つり上げ荷重」(そのクレーンが吊れる最大の荷重。吊り具の重さを含む)で大きく3つに分かれます。

0.5t未満:クレーン則の対象外

クレーン等安全規則 第2条第1号により、つり上げ荷重が0.5トン未満のクレーン・移動式クレーンには、クレーン則が適用されません。そのため、クレーン則に基づく検査や届出の義務はありません。ただし、メーカーの取扱説明書に沿った点検や、安全な使い方が必要なことに変わりはありません。

0.5t以上3t未満:構造規格と自主検査が中心

この区分は労働安全衛生法施行令 第13条第3項で、構造規格に合っていなければ譲渡・貸与・設置ができない機械とされています。国による検査証はありませんが、次のような義務があります。

  • 固定式クレーン:設置する前に「クレーン設置報告書」を労働基準監督署長へ提出(クレーン則 第11条)
  • 移動式クレーン:設置報告書の規定はありませんが、構造規格に合ったものを使う必要があります
  • 共通:年1回の定期自主検査、月1回の定期自主検査、作業開始前点検、記録の3年間保存

3t以上:国の検査と検査証が必要な「特定機械等」

つり上げ荷重3トン以上のクレーン(スタッカー式は1トン以上)と移動式クレーンは、施行令 第12条で「特定機械等」とされ、製造の段階から国の許可や検査を受けます。

  • 製造許可:製造する前に都道府県労働局長の許可が必要(クレーン則 第3条・第53条)
  • 固定式クレーン:工事開始の30日前までに設置届(労働安全衛生法 第88条、クレーン則 第5条)→ 労働基準監督署長の落成検査(クレーン則 第6条)に合格すると「クレーン検査証」が交付されます
  • 移動式クレーン:登録製造時等検査機関の製造検査(輸入品や長く使っていなかったものは使用検査)に合格すると「移動式クレーン検査証」が交付されます。使い始める前に、移動式クレーン設置報告書を労働基準監督署長へ提出します(クレーン則 第61条)
  • 検査証の有効期間:原則2年(クレーン則 第10条・第60条)。期間を延ばして使い続けるには、登録性能検査機関の性能検査に合格して更新します

自主検査と点検の中身

検査・点検頻度主な内容
年次の定期自主検査1年以内ごとに1回定格荷重に相当する荷での荷重試験を含む全体の検査
月次の定期自主検査1か月以内ごとに1回安全装置・警報装置・ブレーキ・クラッチ、ワイヤロープ、フックなどの吊り具、配線など
作業開始前点検その日の作業開始前巻過防止装置、過負荷警報装置、ブレーキ、クラッチ、コントローラーの機能

※移動式クレーンはクレーン則 第76条〜第79条、固定式クレーンは第34条以降に定めがあります。年次・月次の検査結果は記録して3年間保存します。

つり上げ荷重で変わる検査と手続き(移動式クレーン)

荷重別の検査・手続き一覧表

つり上げ荷重製造許可国の検査と検査証届出・報告定期自主検査・点検
0.5t未満不要なしなしクレーン則の対象外
0.5t以上3t未満不要なし(構造規格への適合が必要)固定式:設置報告書/移動式:なし年次・月次・作業開始前
3t以上(固定式)必要落成検査→検査証(原則2年)→性能検査で更新設置届(工事開始30日前)年次・月次・作業開始前
3t以上(移動式)必要製造検査または使用検査→検査証(原則2年)→性能検査で更新設置報告書年次・月次・作業開始前

海上のクレーンにクレーン則は適用される?

ここは誤解されやすいポイントです。

クレーン則 第2条で「船舶安全法の適用を受ける船舶に用いられるもの」として適用除外になっているのは、エレベーターです。クレーンや移動式クレーンについては、条文上、船舶安全法を理由とした適用除外の規定はありません。

一方で、労働省(当時)の通達「船舶に施設されるクレーン等の取扱いについて」(昭和50年3月3日 基発第118号)では、船舶安全法の適用を受ける船舶に設けられたクレーンや移動式クレーンは、施行令 第12条・第13条の特定機械等として扱わず、船舶安全法に基づく船舶の検査の中で検査する、という取扱いが示されています。日本クレーン協会のサイトに掲載された同通達の解説では、船舶安全法は原則として推進機関を持つ船に適用され、自航式でない台船は多くの場合その対象外とされています。

まとめると、次のように考えるのが基本です。

  • 自航式でない起重機船(浮きクレーン):多くの場合、労働安全衛生法上の移動式クレーンとして、製造許可・製造検査・検査証・性能検査などの対象になります
  • 船舶安全法の適用を受ける船に設けたクレーン:検査は船舶安全法の船舶検査の中で行われます
  • 船員法の適用を受ける船員:労働安全衛生法そのものが適用されません(労働安全衛生法 第115条第2項)

実際にどちらに当たるかは、船の種類や航行区域によって変わります。個別の船については、労働基準監督署や船舶検査の窓口に確認してください。

運転と玉掛けに必要な資格

ワイヤロープで吊られたクレーンのフックブロックと補助フック
Jamie Matociños

移動式クレーンの運転資格

つり上げ荷重必要な資格
1t未満小型移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育(労働安全衛生規則 第36条第16号)
1t以上5t未満小型移動式クレーン運転技能講習の修了(または移動式クレーン運転士免許)
5t以上移動式クレーン運転士免許

根拠はクレーン則 第67条(特別教育)と第68条(就業制限)です。なお、公道を走らせる運転はクレーン操作の資格の対象外で、別に道路交通法の運転免許が必要です。ユニック車の多くは2.9t前後の吊り上げ荷重なので、小型移動式クレーン運転技能講習を受けて運転するケースが一般的です。

固定式クレーンの運転資格

  • 5t以上:クレーン・デリック運転士免許(クレーン則 第22条)。免許には「限定なし」「クレーン限定」「床上運転式クレーン限定」があります
  • 5t以上の床上操作式クレーン(運転する人が床の上で荷と一緒に移動する方式):床上操作式クレーン運転技能講習の修了でも運転できます
  • 5t未満:クレーンの運転の業務に係る特別教育(クレーン則 第21条)

玉掛けの資格

荷物にワイヤロープなどを掛けたり外したりする「玉掛け」にも資格が必要です。

  • 1t以上のクレーン・移動式クレーン・デリック:玉掛け技能講習の修了など(クレーン則 第221条)
  • 1t未満:玉掛けの業務に係る特別教育(クレーン則 第222条)

玉掛けの資格は、そのクレーンのつり上げ荷重で判断します。実際に吊る荷物が軽くても、5tのクレーンで玉掛けをするなら技能講習が必要です。

浮きクレーンと船のクレーンの資格

  • 浮きクレーン:法令上は移動式クレーンなので、5t以上なら移動式クレーン運転士免許が必要です。安全衛生技術試験協会も、移動式クレーン運転士の対象として「フローチングクレーン」を挙げています
  • 揚貨装置(船に設けた荷役用クレーン):制限荷重5t以上は揚貨装置運転士免許、5t未満は特別教育(労働安全衛生規則 第36条第6号)
移動式クレーンの運転と玉掛けの資格(つり上げ荷重別)

荷重別の資格一覧表

つり上げ荷重移動式クレーン(浮きクレーン含む)固定式クレーン玉掛け
1t未満特別教育特別教育特別教育
1t以上5t未満小型移動式クレーン運転技能講習特別教育玉掛け技能講習
5t以上移動式クレーン運転士免許クレーン・デリック運転士免許(床上操作式は技能講習でも可)玉掛け技能講習

※上位の資格を持っていれば、下の区分のクレーンも運転できます(例:移動式クレーン運転士免許で1t未満の移動式クレーンも運転可)。0.5t未満のクレーンはクレーン則の対象外です。

資格の取り方は、次の記事で詳しく解説しています。

まとめ

クレーンは、決まった場所で使う「固定式」と、現場を移動できる「移動式」に分かれます。地上ではラフテレーン、オールテレーン、クローラ、ユニック車、かにクレーンなど、海上では浮きクレーン(起重機船)や作業船のクレーン、船の揚貨装置があります。

検査は吊り上げ荷重で変わり、0.5t未満はクレーン則の対象外、0.5t以上3t未満は構造規格と自主検査が中心、3t以上は製造許可から検査証、性能検査まで国の仕組みに乗ります。資格は1tと5tが区切りで、「特別教育→技能講習→免許」の順に重くなると覚えておくと整理しやすくなります。

海上のクレーンは、船舶安全法との関係で扱いが変わることがあります。この記事は概要の紹介なので、実際に運転・作業・検査を行うときは、必ず最新の法令を確認し、勤務先や労働基準監督署、講習機関に相談してください。

参考資料

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