移動式クレーンの検査と届出を順番に整理|定期自主検査・性能検査・車検・変更届・休止報告まで

移動式クレーンの検査と届出 アイキャッチ 点検・安全

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移動式クレーンを運用していると、「検査」と「届出」がとにかく多いと感じませんか。

毎日の点検、毎月・毎年の自主検査、2年ごとの性能検査。ラフターやオールテレーンなら車検もあります。さらに、部品を大きく修理したら変更届や変更検査、しばらく使わないなら休止報告、使い直すときは使用再開検査……。

名前が似ているうえに、提出先も、検査をする人も、それぞれ違うのがややこしいところです。

この記事では、移動式クレーンが生まれてから手放されるまでの流れに沿って、

  1. まず全体像(一覧表)
  2. 製造・使い始めるとき
  3. 使っている間の点検と自主検査
  4. 2年ごとの性能検査
  5. ラフター・オールテレーンの車検
  6. 改造・大きな修理のとき(変更届・変更検査)
  7. 長く使わないとき(休止報告・使用再開検査)
  8. 手放すとき・持ち主が変わるとき

の順に整理します。

※この記事は、2026年10月時点のクレーン等安全規則(クレーン則)、労働安全衛生法、道路運送車両法の条文をもとにまとめたものです。実際の手続きでは、所轄の労働基準監督署や検査機関、運輸支局の案内に従ってください。

まず全体像:いつ・誰が・何をするか

移動式クレーンの一生と、検査・届出の流れ図

この記事で扱うのは、主につり上げ荷重3t以上の移動式クレーンです。3t以上は労働安全衛生法の「特定機械等」にあたり、国の仕組みによる検査と移動式クレーン検査証が必要になります。

タイミング検査・書類誰が行う/提出先根拠
製造したとき製造検査 → 検査証の交付登録設計審査等機関クレーン則 第55条
輸入したとき・長く置いていたとき使用検査 → 検査証の交付登録設計審査等機関第57条
使い始める前移動式クレーン設置報告書所轄の労働基準監督署長第61条
毎日作業開始前点検事業者第78条
1か月以内ごと月次自主検査事業者第77条
1年以内ごと年次自主検査(荷重試験あり)事業者第76条
検査証の期限まで(原則2年)性能検査 → 有効期間の更新登録性能検査機関第81条・第84条
車検の期限まで継続検査(車検)運輸支局など道路運送車両法 第61条ほか
構造部分などを変えるとき変更届(様式第12号、工事開始の30日前まで)→ 変更検査所轄の労働基準監督署長第85条・第86条
検査証の期限をまたいで休むとき休止の報告所轄の労働基準監督署長第89条
休止後、再び使うとき使用再開検査所轄の労働基準監督署長第90条
持ち主(設置している者)が変わったとき検査証の書替え(10日以内)所轄の労働基準監督署長第59条5項
使用をやめたとき検査証の返還所轄の労働基準監督署長第93条

※ラフター・オールテレーンとクローラクレーンの違いは「ラフター・オールテレーン・クローラクレーンの違い」で紹介しています。

つり上げ荷重3t未満の場合

0.5t以上3t未満の移動式クレーンには、検査証・性能検査・設置報告書・変更届・休止報告の決まりはありません。そのかわり、

  • 設置したときに、事業者が荷重試験と安定度試験を行う(第62条)
  • 作業開始前点検、月次・年次の定期自主検査を行う(第76条〜第78条)

が中心になります。0.5t未満はクレーン則の対象外です。荷重ごとの区分は「クレーンの種類と検査・資格」でも整理しています。

移動式クレーンとしては「特定自主検査」の対象外

フォークリフトや油圧ショベルなどの車両系建設機械には、資格を持った人が1年に1回行う特定自主検査があります。移動式クレーンとしてつり作業に使う限り、特定自主検査の対象にはなりません。クレーンの場合は、年次自主検査と、国の仕組みによる性能検査の組み合わせで安全を確かめます。

ただし、クラムシェルやハンマーグラブなど特殊な用途のアタッチメントを付けて掘削や基礎工事に使う場合は、移動式クレーンとしての検査に加えて車両系建設機械としての扱いも必要になり、特定自主検査が必要になることがあります。くわしくは「クレーンのアタッチメント図鑑」で紹介しています。

製造・使い始めるとき

製造検査(輸入品は使用検査)で検査証が交付される

3t以上の移動式クレーンは、製造した段階で登録設計審査等機関の製造検査を受けます(第55条)。構造や機能の点検に加えて、

  • 荷重試験:定格荷重の1.25倍(定格荷重が200tを超える場合は定格荷重+50t)の荷をつって、つり上げ・旋回・走行などを行う
  • 安定度試験:定格荷重の1.27倍の荷をつって、もっとも不安定な条件で地切りする

を行い、合格すると移動式クレーン検査証が交付されます。

次の場合は、製造検査のかわりに使用検査を受けます(第57条)。

  • 移動式クレーンを輸入したとき(海外製のオールテレーンなど)
  • 製造検査や使用検査のあと、2年以上(保管状況が良いと認められたものは3年以上)設置しないまま置いていたものを使い始めるとき
  • 使用を廃止したクレーンを、もう一度使うとき

「設置届」ではなく「設置報告書」

現場では「設置届」と呼ばれることもありますが、移動式クレーンで出すのは「移動式クレーン設置報告書」です。

  • 固定式クレーン(天井クレーンやジブクレーンなど):工事開始の30日前までに設置届を出し、監督署の落成検査を受ける
  • 移動式クレーン:使い始める前に、設置報告書に「移動式クレーン明細書」と「検査証」を添えて、所轄の労働基準監督署長に提出する(第61条)

移動式クレーンは工場で完成した状態で検査を受けているので、現場ごとに落成検査を受ける必要はありません。そのかわり、「この事業場でこのクレーンを使います」と報告する仕組みになっています。

設置報告書は、移動式クレーンを持つ事業場として使い始めるときの手続きです。現場が変わるたびに出すものではありません。

中古で買ったら、10日以内に検査証の書替え

移動式クレーンを設置している者(持ち主)が変わったときは、変わってから10日以内に、検査証の書替えを所轄の労働基準監督署長に申請します(第59条5項)。中古のラフターを買ったときなどに忘れやすいので注意しましょう。

なお、検査証をなくしたり傷めたりしたときは、再交付を受けます(第59条)。

検査証は必ずクレーンに備え付ける

移動式クレーンで作業をするときは、検査証をそのクレーンに備え付けておく決まりです(第63条)。運転室の決まった場所に入れておき、すぐに出せるようにしておきましょう。

使っている間:毎日・毎月・毎年の点検

ラフターの2年間の点検・検査スケジュール例

使っている間に事業者が行うのは、次の3つです。

種類頻度主な内容根拠
作業開始前点検その日の作業を始める前巻過防止装置、過負荷警報装置などの警報装置、ブレーキ、クラッチ、コントローラーの機能第78条
月次自主検査1か月以内ごとに1回安全装置・警報装置・ブレーキ・クラッチの異常、ワイヤロープとつりチェーンの損傷、フックなどのつり具の損傷、配線・配電盤・コントローラーの異常第77条
年次自主検査1年以内ごとに1回クレーン全体の自主検査+定格荷重に相当する荷重での荷重試験(定格速度で、つり上げ・旋回・走行などを行う)第76条

年次自主検査の荷重試験は、省略できる場合がある

年次自主検査では荷重試験が必要ですが、次のどちらかにあたるときは省略できます(第76条3項)。

  • 自主検査の日の前2か月以内に、性能検査の荷重試験を受けている
  • 自主検査の日の後2か月以内に、検査証の有効期間が切れる(=もうすぐ性能検査を受ける)

性能検査とタイミングを合わせると、荷重試験を二重に行わずに済みます。

使わない期間の扱い

1か月を超えて使わない期間は月次自主検査、1年を超えて使わない期間は年次自主検査をしなくてもかまいません。ただし、使い始めるときには、その自主検査を行う必要があります(第76条2項・第77条2項)。

記録は3年、異常はすぐ補修

自主検査の結果は記録して3年間保存します(第79条)。点検や自主検査で異常が見つかったら、直ちに補修しなければなりません(第80条)。

点検のポイントは「移動式クレーンの目視点検と安全のポイント」、ワイヤロープの判断基準は「ワイヤロープの点検と交換基準」で詳しく紹介しています。

2年ごと:性能検査で検査証を更新

移動式クレーン検査証の有効期間は、原則2年です(第60条)。期限が来る前に性能検査を受けて合格すると、有効期間が更新されます。

  • 検査をするのは登録性能検査機関(日本クレーン協会などの登録を受けた機関)
  • 内容は、各部の構造と機能の点検+定格荷重に相当する荷重での荷重試験(第81条)
  • 合格すると、検査の結果に応じて2年、または2年未満、または2年を超え3年以内の期間で更新される(第84条)

性能検査の日は、試験に使う荷の準備など、検査に必要な準備を事業者側で行います(第83条)。予約が混み合う時期もあるので、期限の数か月前から日程を決めておくと安心です。

検査証の期限が切れたクレーンは、使うことができません。期限切れのクレーンを使って送検された例もあります。

ラフター・オールテレーンは「車検」も別に必要

ラフターやオールテレーンは公道を走るので、道路運送車両法の決まりも受けます。ここで大事なのは、クレーンの検査証と、自動車の車検証は別物だということです。

クレーンの検査証自動車検査証(車検証)
法律労働安全衛生法・クレーン則道路運送車両法
見るところクレーンとしての構造・つり上げ性能公道を走る車としての安全・環境性能
更新性能検査(原則2年)継続検査(車検)
窓口登録性能検査機関運輸支局・自動車検査登録事務所(指定工場など)

車検の有効期間

ラフターやオールテレーンは、ふつう大型特殊自動車として登録されています。荷物を運ぶトラック(貨物自動車)ではないため、自家用の大型特殊自動車の車検の有効期間は2年です(道路運送車両法 第61条)。

ただし、オペレーターを付けずに有償で貸し出す車両(いわゆるレンタカーの許可を受けた車両)は、1年になります。登録の区分によって変わるので、車検証で確認してください。

3か月ごとの定期点検整備

車両総重量8t以上の自家用自動車は、3か月ごとの定期点検整備が必要です(道路運送車両法 第48条)。ラフターやオールテレーンの多くはこれにあたります。クレーンの月次自主検査とは別の制度なので、記録も分けて管理しましょう。

クローラクレーンには車検がない

クローラクレーンは公道を自走しないので、車検はありません。現場へはトレーラーで分解輸送するのが一般的で、車検が必要なのは運ぶトレーラー側です。クレーンとしての検査証・性能検査・自主検査は、ラフターと同じように必要です。

車両積載形クレーンは「トラックの車検」+「クレーンの自主検査」

トラックにクレーンを積んだ車両積載形のクレーンは、つり上げ荷重3t未満のものが多く、クレーンとしての検査証はありません。トラックとしての車検と、クレーンとしての点検・自主検査の両方が必要になります。

改造・大きな修理のとき:変更届と変更検査

変更届が必要な7つの部分

3t以上の移動式クレーンで、次の部分を変更しようとするときは、「移動式クレーン変更届」(様式第12号)に、移動式クレーン検査証と変更しようとする部分の図面を添えて、所轄の労働基準監督署長に提出します(第85条)。ワイヤロープ・つりチェーンの変更だけは、図面の添付がいりません。

  1. ジブその他の構造部分
  2. 原動機
  3. ブレーキ
  4. つり上げ機構
  5. ワイヤロープまたはつりチェーン
  6. フック、グラブバケットなどのつり具
  7. 台車

提出の期限は、工事を始める日の30日前までです(労働安全衛生法 第88条1項)。思ったより早いので、修理の計画を立てた段階で準備を始めましょう。

変更検査が必要なのは「構造部分」と「台車」

変更届を出した部分のうち、ジブその他の構造部分と台車を変更したときは、さらに所轄の労働基準監督署長による変更検査を受けます(第86条)。製造検査と同じように、荷重試験と安定度試験を行います。

ただし、監督署長が検査の必要がないと認めた場合は、変更検査を受けなくてもよいことになっています。合格すると、検査証の裏に検査日や変更部分が書き込まれます(第88条)。

変更届が必要な7つの部分

「同じ部品に取り替えるだけ」はどうなる?

ここが現場でいちばん迷うところです。

  • 能力・材料・形状・寸法が同じ部品に取り替えるだけ(消耗したワイヤロープを同じ仕様のものに交換する、など)は、「変更」に含まれないとされています。この場合、変更届はいりません
  • 仕様が変わる交換(太さや種類の違うワイヤロープ、能力の違うフック、型式の違う原動機など)や、ジブを溶接で補修する・継ぎ足すといった構造部分に手を入れる修理は、変更届や変更検査が必要になる可能性があります

判断に迷ったら、工事に取りかかる前に、メーカーや所轄の労働基準監督署に相談するのが確実です。30日前という期限があるので、「直してから相談」では間に合いません。

長く使わないとき:休止報告と使用再開検査

休止の報告は「検査証の期限内」に

クレーンをしばらく使わない予定で、その期間が検査証の有効期間を過ぎてしまうときは、有効期間中に所轄の労働基準監督署長へ休止を報告します(第89条)。

  • 休む期間が検査証の期限内に収まるなら、報告は不要です
  • 期限をまたいで休むなら、期限が切れる前に報告します

再び使うときは使用再開検査

休止したクレーンを再び使うときは、所轄の労働基準監督署長による使用再開検査を受けます(第90条)。内容は製造検査と同じく、構造・機能の点検と、荷重試験・安定度試験です。合格すると、検査証の裏に検査日と結果が書き込まれます(第92条)。

休止の報告をしないまま検査証の期限が切れると、使用再開検査の対象から外れ、手続きが重くなることがあります。使わない予定が決まったら、検査証の期限より前にどうするかを決めておきましょう。具体的な扱いは所轄の監督署に確認してください。

あわせて、休んでいた期間の月次・年次自主検査も、使い始める前に行います。

手放すとき・持ち主が変わるとき

  • 使用をやめる(廃止)とき:遅滞なく、検査証を所轄の労働基準監督署長に返還します(第93条)。海外へ売却した場合も同じです
  • つり上げ荷重を3t未満に変更したときも、検査証を返還します(第93条)
  • 国内で売却する場合は、買った側が10日以内に検査証の書替えを受けます(第59条5項)

一度廃止したクレーンを再び使うには、使用検査からやり直しになります(第57条)。

よくある勘違いチェック

よくある言い方実際は
移動式クレーンも「設置届」を出す移動式は設置報告書。設置届と落成検査は固定式クレーンの手続き
クレーンも特定自主検査を受ける移動式クレーンとしては特定自主検査の対象外。年次自主検査+性能検査。ただしアタッチメントによっては車両系建設機械として必要になることも
車検を通したからクレーンも大丈夫車検と性能検査は別。期限もそれぞれ管理する
部品を替えたら必ず変更届能力・材料・形状・寸法が同じ部品への交換は「変更」に含まれない。仕様が変わる・構造部分に手を入れるなら要確認。期限は30日前
しばらく使わないなら何もしなくていい検査証の期限をまたぐなら期限内に休止報告。再開時は使用再開検査

まとめ

移動式クレーンの検査と届出は、次の流れで覚えると整理しやすくなります。

  1. 生まれるとき:製造検査(輸入品は使用検査)で検査証をもらう
  2. 使い始めるとき:設置報告書を監督署へ。持ち主が変わったら10日以内に書替え
  3. 使っている間:毎日の作業開始前点検、月次・年次の自主検査(記録は3年)
  4. 2年ごと:性能検査で検査証を更新。ラフター・オールテレーンは車検と3か月点検も別に
  5. 改造・大きな修理:工事開始30日前までに変更届。構造部分・台車なら変更検査
  6. 長く休む:検査証の期限内に休止報告。再開は使用再開検査
  7. 手放す:検査証を返還

書類と検査の期限を一覧にしておけば、「気づいたら検査証が切れていた」という事態は防げます。

今日もご安全に。

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