定格総荷重表の読み方|クローラとラフターの作業半径・ブーム長さ

定格総荷重表の読み方(Crane-Info アイキャッチ) 機種・用語

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「カタログの定格総荷重表、数字がたくさん並んでいてどこを見ればいいの?」「200t吊りのクレーンなら200tの荷物が吊れるの?」という疑問に答えるために、この記事ではクローラクレーンとラフテレーンクレーン(ラフター)を例に、定格総荷重表の読み方を順番に解説します。

※この記事の表は、読み方を説明するための架空の数値です。実在する機種の性能ではありません。実際の作業では、必ずそのクレーンのメーカーが発行した最新の定格総荷重表と取扱説明書を使い、作業計画に従ってください。

定格総荷重表とは

定格総荷重表は、クレーンが「どの姿勢のときに、最大で何トンまで吊れるか」をまとめた表です。移動式クレーンは、ブームを長く伸ばしたり、遠くへ倒したりするほど吊れる重さが小さくなります。そのため、1つの数字ではなく、姿勢ごとの数字を一覧にした表が用意されています。

たとえば、コベルコ建機のクローラクレーン「マスターテック7200G NEO」は、最大つり上げ能力が「200t × 5.0m」と公表されています。これは「作業半径5.0mのときに最大200t」という意味で、ブームを倒して作業半径が大きくなれば、吊れる重さはどんどん小さくなります。この変化を一覧にしたものが定格総荷重表です。

建設現場で吊り天秤を使って荷を吊る赤いクローラクレーン
Arc Sotto

まず押さえたい4つの言葉

定格総荷重

クレーンが吊れる最大の荷重のことで、フックブロックやワイヤロープの吊り具など、フックから下にぶら下がるものの質量を含んだ値です。カタログの注記にも、多くの場合「定格総荷重はフックなどの吊り具の質量を含む」と書かれています。

定格荷重

定格総荷重から、フックやグラブバケットなどの吊り具の質量を差し引いた値です。クレーン等安全規則 第1条第6号で定義されています。実際に吊れる「荷物そのもの」の重さの上限は、こちらで考えます。吊り上げ荷重ごとに必要な資格や検査については、クレーンの種類を地上・海上別に解説|荷重別の検査と必要な資格で整理しています。

定格総荷重の中身(フックブロック・玉掛け用具・吊れる荷)

作業半径

クレーンの旋回の中心から、フックの中心までの水平距離です。ブームの長さではない点に注意してください。同じブーム長さでも、ブームを倒すほど作業半径は大きくなります。

ブーム長さ

ブームの根元(フートピン)から先端(ポイントピン)までの長さです。クローラクレーンは、ブームの中間部材を差し込んだり抜いたりして長さを変えます。

作業半径とブーム長さの測り方(クローラクレーンの側面図)
作業半径が大きいほど吊れる重さが小さくなる理由(モーメントの概念図)

定格総荷重表の基本の形

クローラクレーンの定格総荷重表は、多くの場合「縦に作業半径、横にブーム長さ」が並んだ形をしています。下の表は、読み方を練習するための架空の表です。

説明用の定格総荷重表(架空の数値)

作業半径(m)ブーム長さ 18.3mブーム長さ 30.5mブーム長さ 42.7mブーム長さ 54.9m
5.0150.0―――
6.0130.0110.0――
8.095.090.080.0―
10.072.070.065.058.0
12.058.056.053.048.0
14.048.046.044.040.0
16.040.039.037.034.0
20.0―29.028.026.0
24.0―22.021.520.0
30.0―15.515.014.0

(単位:t。架空の数値です)

表の「―」は、その組み合わせでは作業できないという意味です。たとえばブーム長さ54.9mでは、ブームを一番起こしても作業半径を10.0mより小さくできないため、5.0〜8.0mの欄は「―」になっています。反対に、短いブームは遠くまで届かないので、作業半径20m以上の欄が「―」になります。

読み方の手順

手順1:ブーム長さを決める

まず、使うブームの長さの列を選びます。建物の高さや障害物を越えられるかどうかから、必要なブーム長さが決まります。ここでは例として「30.5m」の列を使います。

手順2:作業半径を確認する

次に、荷物を吊る位置と降ろす位置の作業半径を確認します。作業半径は、吊る途中で一番遠くなる位置で考えます。ここでは例として「12.0m」とします。

手順3:表の交わるところを読む

ブーム長さ30.5mの列と、作業半径12.0mの行が交わるところを読むと「56.0t」です。これが、この姿勢での定格総荷重です。

手順4:吊り具の質量を差し引く

定格総荷重には、フックブロックや玉掛け用のワイヤロープ、シャックル、吊り天秤などの質量が含まれています。たとえば次のような場合を考えます。

  • フックブロックの質量:2.0t
  • 玉掛けワイヤロープなどの吊り具:0.5t

このとき、吊れる荷物の質量の上限は「56.0t − 2.0t − 0.5t = 53.5t」です。

手順5:余裕を持たせて判断する

計算した値ちょうどの荷物を吊るのではなく、荷物の質量の誤差や、風・地盤の影響を考えて、余裕を持って計画します。具体的な余裕の取り方は、勤務先の作業基準や作業計画に従ってください。

表の「間の値」はどう読む?

作業半径が表の値の間にあるとき

作業半径が13.0mのように、表にない値になることがあります。このときは、作業半径が大きい方(14.0m)の値を使うのが基本です。上の表のブーム長さ30.5mなら、12.0mの56.0tではなく、14.0mの46.0tで考えます。

2つの値の間をとって「51tくらい」と計算する(比例配分する)のは、安全側の判断にならないため避けます。

ブーム長さが表の値の間にあるとき

ブーム長さも同じで、表に載っている長さの間になる場合は、吊れる重さが小さくなる側(長い方のブーム)の値で考えるのが安全です。ただし、ブームの組み方によっては専用の表が用意されている機種もあるので、メーカーの資料で確認します。

記事の見本表(架空)で手順の例と間の値を読む

注意書きも必ず読む

定格総荷重表の下や欄外には、表を使うための条件が書かれています。数字だけを見て判断せず、次のような注意書きを必ず確認してください。

  • 地盤の条件:多くの表は「水平で堅い地盤に設置したとき」の値です。地盤が軟らかい場合は、敷鉄板を敷くなどの対策が必要です
  • カウンタウェイトの量:カウンタウェイトの量が変わると、別の表を使います
  • 吊るフック:主巻(メインフック)と補巻(補助フック)では、吊れる重さの上限が違います
  • ジブやタワー仕様:ジブを付けた場合や、ラッフィングタワー仕様では、まったく別の表になります
  • 旋回の範囲:機種によっては、前方・側方・後方で値が変わるものがあります
  • 風の影響:大きな面積の荷物を吊るときや、強風のときは、表の値より小さい重さでも危険になることがあります
クローラクレーンの旋回位置と転倒支点までの距離(上から見た図)

過負荷防止装置があっても表は読む

最近のクローラクレーンには、吊っている荷重と姿勢から、定格総荷重に対する割合を表示し、超えそうになると警報を出したり動作を止めたりする「過負荷防止装置(モーメントリミッタ)」が付いています。

ただし、装置の設定(ブーム長さやカウンタウェイトの量など)が実際と違っていれば、正しく働きません。クレーン等安全規則 第69条は、移動式クレーンに定格荷重を超える荷重をかけて使うことを禁止しています。作業の前に定格総荷重表を読んで計画を立て、装置は「最後の守り」と考えることが大切です。

各メーカーの定格総荷重表はどこで見られる?

実機の定格総荷重表は、各メーカーのスペックカタログや取扱説明書に載っています。製品ページから資料をダウンロードできる機種もあります。各メーカーの得意分野は、国内の移動式クレーンメーカー6社を紹介でまとめています。

同じ機種名でも、年式や仕様(型式)によって表が違うことがあります。現場では、そのクレーン本体に備え付けられている資料や、メーカーの最新版で確認してください。

ラフテレーンクレーン(ラフター)の定格総荷重表はアウトリガーが鍵

ここからは、ホイール式のラフテレーンクレーン(ラフター)の荷重表を見ていきます。作業半径とブーム長さで読む基本はクローラクレーンと同じですが、ラフターではアウトリガーの張り出し幅が荷重表を大きく左右します。

張り出し幅ごとに別の表がある

アウトリガーは、車体の左右に脚を張り出して機械を支える装置です。ラフターの荷重表は、一般に「最大張り出し」「中間張り出し」「最小張り出し」のように、張り出し幅ごとに別々の表が用意されています。

脚を広く張り出すほど機械を支える幅が広がり、転倒しにくくなります。反対に、張り出しが短いほど、同じブーム長さ・同じ作業半径でも定格総荷重は小さくなります。狭い現場で「最大まで張り出せないから中間で」という判断をすると、吊れる重さが大きく下がる点に注意が必要です。

アウトリガーの張り出し幅と吊れる重さの関係(上から見た図)

見本の表で張り出し幅の違いを比べる

【注意】次の表は説明用の架空の数値で、実在する機種の値ではありません。

見本:ラフテレーンクレーンの定格総荷重表(ブーム20m、単位:t)

作業半径最大張り出し中間張り出し最小張り出し
4m16138
6m118.55
8m863.5
10m64.52.5
12m4.53.41.8
14m3.52.61.3
16m2.82.01.0
18m2.21.5—

【注意】上の表は説明用の架空の数値で、実在する機種の値ではありません。 実際の作業には絶対に使わないでください。

同じ作業半径の行を横に見ると、張り出しが短くなるほど数値が下がっていることが分かります。表にない作業半径は、クローラクレーンと同じく補間せず、大きい側の値を読みます。

例題:最大張り出しなら吊れるが、中間張り出しでは吊れない

条件:上の見本の表を使用。荷の重さ4.5t、玉掛け用具0.2t、フックブロック0.3t(架空の値)。作業半径10m。

  1. 必要な定格総荷重を計算する → 4.5 + 0.2 + 0.3 = 5.0t
  2. 最大張り出し・作業半径10m → 6t。5.0t以下なので、表の上では吊れます
  3. 中間張り出し・作業半径10m → 4.5t。5.0tに足りないので、吊れません

現場の都合でアウトリガーを最大まで張り出せないときは、作業半径を小さくできる位置に機械を据える、より大きな機種を選ぶなど、作業計画の段階で見直す必要があります。

左右の張り出し幅や旋回範囲で表が変わることも

機種によっては、左右で張り出し幅が違う状態(片側だけ最大、反対側は中間など)で作業するための表や制御が用意されている場合があります。また、ブームを向ける範囲(前方・側方・後方、あるいは全周)によって、読む表や上限が変わる場合もあります。一般に、側方は前方・後方より不安定になりやすいとされますが、扱いは機種によって異なります。どの範囲でどの表を使うかは、必ずその機械の取扱説明書と表の注記で確認してください。

タイヤ吊り(走行時吊り上げ)は別扱い

アウトリガーを張り出さず、タイヤで支えたまま荷を吊ることを「タイヤ吊り」といいます。機種によっては、タイヤ吊り用の別の表が用意されていますが、アウトリガー使用時よりずっと小さい荷重に制限されるのが一般的です。ブームの向き、タイヤの空気圧、吊ったまま走行するかどうかなどにも厳しい条件が付くことが多く、タイヤ吊りそのものを認めていない機種もあると考えられます。アウトリガー用の表をタイヤ吊りに使うことは絶対にしないでください。

モーメントリミッタに実際の張り出し状態を正しく伝える

ラフターの過負荷防止装置(モーメントリミッタ)は、アウトリガーの張り出し状態に合わせた表を使って、警報や停止の判断をします。張り出し幅を自動で検出する機種もあれば、運転者が設定を入力する方式のものもあります。

もし「最大張り出し」と入力したまま実際には中間張り出しで作業すると、装置は実際より大きな能力があると判断してしまい、警報が鳴る前に転倒限界に近づくおそれがあります。作業前に、表示されている張り出し状態が実際の状態と合っているか、必ず目で確かめましょう。

ラフテレーンクレーンの製品ページ

メーカー代表的なラフテレーンクレーン製品ページ
タダノクレヴォシリーズ、エボルトラフテレーンクレーン製品一覧
加藤製作所SL-500RfⅢ などラフテレーンクレーン製品ページ(SL-500RfⅢ)

※製品ページの内容やURLは変わることがあります。実際に作業する機械の定格総荷重表は、その機械の取扱説明書や機体の表示で確認してください。

まとめ

定格総荷重表は、「ブーム長さの列」と「作業半径の行」が交わるところを読む表です。読んだ値は吊り具を含む定格総荷重なので、フックブロックや玉掛け用具の質量を差し引いたものが、吊れる荷物の上限になります。

作業半径やブーム長さが表の値の間にあるときは、吊れる重さが小さくなる側の値を使い、地盤・カウンタウェイト・フック・ジブなどの注意書きも必ず確認します。

ラフターはアウトリガーの張り出し幅ごとに表が分かれ、張り出しが短いほど吊れる重さが下がります。タイヤ吊りは別扱いです。この記事の表は説明用の架空の数値なので、実際の作業では必ずメーカーの最新の資料を使ってください。

参考資料

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