テレスコブームのクローラクレーンの魅力|国内機と海外機の違いも解説

テレスコブームのクローラクレーンのイラスト(Crane-Info) 機種・用語

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クローラクレーンといえば、トラス状に組んだラチスブーム。ラフターやオールテレーンのようなホイールクレーンといえば、伸び縮みするテレスコブーム。現場でよく見るのは、この組み合わせです。

ところが、クローラにテレスコブームを載せたテレスコブーム式クローラクレーン(テレスコクローラ)という機械もあります。台数は多くありませんが、調べてみると、はっきりした得意分野がありました。この記事では、

  1. ブームと足回りの組み合わせのおさらい
  2. テレスコクローラの魅力と弱点
  3. 国内外の代表機種と歴史
  4. 国内機と海外機の違い

の順に紹介します。ブームの違いそのものは「ラチスブームとテレスコブームの違い」、足回りの違いは「ラフター・オールテレーン・クローラの違い」で詳しく解説しています。

※この記事の能力値は、2026年10月時点で各メーカーの公式サイト・カタログ・発表資料に載っている「最大定格総荷重(最大つり上げ能力)」です。特定の仕様・最小の作業半径での値なので、実際の作業ではブーム長さや作業半径、設置条件によって大きく変わります。作業計画には必ず実機の定格総荷重表を使ってください。

ブームと足回りの組み合わせ

移動式クレーンは、ざっくり「ブーム(腕)」と「足回り」の組み合わせで見分けられます。

ラチスブーム テレスコブーム
クローラ(履帯) 定番。大型・重量物・長いブーム この記事の主役
ホイール(タイヤ) 後編で紹介 定番。ラフター・オールテレーン

定番の組み合わせには、それぞれ理由があります。

  • クローラ×ラチス:クローラはもともと現場でブームを組み立てて使う機械。組み立てる手間をかければ、軽くて長いラチスブームで大きな能力が出せる。
  • ホイール×テレスコ:ホイールクレーンは「走ってきてすぐ作業する」のが持ち味。ブームを組み立てずに伸ばせるテレスコブームと相性がいい。

逆の組み合わせは、この「定番の弱点」を埋めるために生まれた、と考えるとわかりやすくなります。

テレスコブーム式クローラクレーン

どんなクレーン?

クローラ(履帯)の足回りに、ラフターと同じような伸縮式のテレスコブームを載せたクレーンです。メーカーは「テレスコピッククローラクレーン」と呼び、海外では「テレクローラ(telecrawler)」とも呼ばれます。

魅力① ブームの組立がいらない

ラチスブームのクローラクレーンは、現場でブームを地面に並べてつなぐ場所と時間、そして多くの場合は組立用の相番クレーンが必要です。テレスコクローラはブームを伸ばすだけ。

コベルコ建機は、2000年に自社初のテレスコクローラ「TK550」を発売したとき、まず日本で売り出しました。理由は「日本の現場は狭く、ラチスブームを組み立てるのが難しいから」と業界誌に説明しています。

さらに、コベルコの現行機 TK550G は組立相番クレーンを必要としない自力脱着装置を設定しています(コベルコ建機公式カタログ)。

魅力② ブームの長さを自由に変えられる

ラチスブームは、一度組んだら長さを変えるのに組み直しが必要です。テレスコブームなら、作業の途中でも長さを変えられます。

欧州の業界誌は、建物が混み合った現場や、空港の近く・鉄道沿いのように高さ制限が厳しい場所での強みとして紹介しています。コベルコ TK550G のカタログにも「高さ制限9m時 21.8t×6.5m」という低い空間での能力が載っています。

ブームはどうやって伸びる?(伸縮のしくみ)

テレスコブームの伸び方には、大きく分けて次のような方式があります。

シリンダ+ワイヤロープ式(同時伸縮)

2段目を油圧シリンダで押し出し、その先の段はワイヤロープとシーブ(滑車)で同時に引き出す方式です。ワイヤを2段目の先端のシーブで折り返しているため、3段目は2段目の2倍の長さだけ伸びます。縮めるときは、別の「縮みワイヤ」で引き戻します(タダノ「製品ガイド」)。

テレスコブームの伸縮のしくみ:シリンダ+ワイヤロープ式(同時伸縮)の図解

シングルシリンダ+ピン式

1本の油圧シリンダが段を1つずつ押し出し、決まった位置でピンを差して固定していく方式です。シリンダとのピンを外して次の段へ移り、これをくり返して全体を伸ばします。オペレータがブーム長さを画面で選ぶと、伸縮とピンの差し替えはコンピュータが自動で行います。タダノは「ピンロック式」、リープヘルは「TELEMATIK」と呼んでいます。

動く段の中にワイヤや油圧機器を入れずに済むのでブームを軽くでき、長いブームに向いているのが特徴です(リープヘル)。海外のテレスコクローラでは、タダノ GTC-1600 がシングルシリンダ+ピン式、Grove GHC140 がピンで固定するブームを採用しています。

テレスコブームの伸縮のしくみ:シングルシリンダ+ピン式の図解

全段シリンダ式

各段を油圧シリンダで伸ばす方式です。コベルコ TK550G は「全段シリンダ伸縮の4段構成ブーム」で、オーガやバイブロなど基礎工事のハードな作業に耐える頑丈な構造とされています(コベルコ建機カタログ)。

魅力③ 基礎工事の「相棒」になれる

国内のテレスコクローラが最も活躍しているのは、基礎工事です。

  • コベルコ TK550G:建方はもとより、オーガ、バイブロ、クラムシェルといった基礎作業や、基礎相番機として活躍(公式カタログ)
  • コベルコ TK550GSB(ショートブーム仕様):低い空間に対応し、ハンマーグラブ作業や全旋回ケーシングジャッキのつり上げにも対応(公式カタログ)
  • 住友重機械建機クレーン 650TLX:基礎工事向けに設計され、オーガやバイブロなどの重いアタッチメントに対応(業界誌)

なお、クラムシェルやオーガなどを付けると、その作業は「移動式クレーン」ではなく車両系建設機械の扱いになることがあります。詳しくは「クレーンのアタッチメント図鑑」で解説しています。

魅力④ 荷をつったまま走れる・足場が悪くても強い

クローラはタイヤより接地圧が低く、軟らかい地盤や凸凹のある場所に強い足回りです。アウトリガを張らずに作業でき、条件によっては荷をつったまま移動(ピック&キャリー)できます。

リープヘルは自社の LTR シリーズについて「狭い現場や傾斜地でも、荷をつったまま走行できる」と説明しています。2024年発表の LTR 1150 は、傾斜4°までの定格荷重表や、履帯の幅と旋回角度から能力をリアルタイムで計算する仕組みを備えています。

※荷をつったままの走行や傾斜地での作業は、必ずその機械の取扱説明書・定格総荷重表で認められた範囲で行ってください。地盤の傾きについては「クローラクレーン地盤傾斜とブーム横引き」もどうぞ。

魅力⑤ 運びやすい

テレスコクローラは、同じクラスのラチス機よりトレーラの台数が少なくて済むことが多い機械です。

  • コベルコ TK550G:最小輸送幅2.99m、最小本体質量30.8t(フック付き・サードウインチなしの場合)
  • リープヘル LTR 1100:標準的な低床トレーラ2台で輸送でき、現場で自力で組み立てられる(公式ページ)

弱点もある

業界誌は、弱点も指摘しています。

  • 同じクラスのラチスクローラのほうが、一般につり上げ能力・作業半径ともに大きい
  • 重い繰り返し作業(デューティサイクル作業)には、ラチス機のほうが向くことが多い
  • 機械の値段やレンタル料は、ラチス機より高めになりやすい

「長いブームで大きなものを遠くまで」はラチスクローラ、「組み立てずにすぐ、狭い場所で」はテレスコクローラ、という住み分けです。

代表機種(国内メーカー)

メーカー 機種 最大定格総荷重 ブーム長さ
コベルコ建機 TK550G 55t×3.0m 10.0〜30.1m
コベルコ建機 TK550GSB(ショートブーム) 55t×3.0m 7.7〜20.9m
コベルコ建機 TK750G 75t×3.0m 10.0〜30.1m
コベルコ建機 TK750GLB(ロングブーム) 75t×2.6m 11.6〜35.0m
住友重機械建機クレーン 650TLX 65t×3.0m 10.0〜30.1m
住友重機械建機クレーン SDX407-2(アースドリル兼用) 40t×4.0m 10.5〜21.0m

コベルコ建機は、このほかに小型テレスコピッククローラクレーン(CK80UR〜CK230SR、最大10t)もそろえています。公式サイトでは「地下鉄工事などの狭い現場で、ふところの深いクレーン能力が得られる」と紹介されています。

代表機種(海外メーカー)

メーカー 機種 能力 ひとこと
リープヘル(ドイツ) LTR 1100 100t 2005年、同社初の量産テレスコクローラ
リープヘル LTR 1150 150t級 2024年発表。風力発電所の補助作業にも
リープヘル LTR 1220 220t 2013年発表。テレスコブーム60m
リンクベルト(米国) TCC-2500 250USt(約227t) 2016年発表。当時「市場最大のテレスコクローラ」
タダノ(米国 Tadano Mantis) GTC-1600 160USt(約145t) 2021年発表。6段ブーム最長約61m
マニトワック(Grove) GHC140 127t 2019年発表。電力・再エネ・トンネル工事など
SANY(中国) SCC1300TB 130t 2020年発表。同社TBシリーズ最大。杭の鉄筋かご建込み・送電線・風力の補助

リープヘルは2009年に、オールテレーンの頂点 LTM 11200-9.1 のブームを履帯に載せた 1,200t級のLTR 11200(テレスコブーム100m)も発表しています。テレスコクローラの「最大級」はこの機械です。

歴史:ニッチな機械から基礎工事の主役へ

  • 〜1990年代:テレスコクローラ自体は古くからあったが、湿地での作業やパイプライン敷設などのニッチな用途向けだった。米国の SpanDeck(のちの Mantis、現在はタダノグループ)は1970年代ごろから製造。
  • 1990年:リープヘルが、800tのオールテレーンの上部を大型クローラの履帯に載せた一品物を日本の顧客向けに納入。
  • 2000年:コベルコ建機が TK550(55t)を日本で発売。基礎工事の現場向けに、テレスコクローラを本格的に売り出した。
  • 2005年:日立住友重機械建機クレーン(現・住友重機械建機クレーン)が SCX400T(40t)、リープヘルが LTR 1100 を発表。各社の参入が続く。
  • 2009〜2010年代:リープヘル LTR 11200(1,200t級)、LTR 1220、リンクベルト TCC-2500 など大型化が進む。
  • 2017年〜:住友 650TLX を世界展開、Grove GHC140(2019年)、タダノ GTC-1600(2021年)、コベルコ TK750GLB(2023年、最長35mブーム)、リープヘル LTR 1150(2024年)。

国内機と海外機の違い

テレスコクローラは、ここ10年ほどで海外メーカーの新機種が次々に増えています。一方、国内メーカーのラインナップは55〜75t級と小型機が中心。同じ「テレスコクローラ」でも、国内と海外ではかなり性格が違います。

海外:大型化・多機種化が進む

  • リープヘル:100t(LTR 1100)、150t(LTR 1150、2024年追加)、220t(LTR 1220)と段階的に機種を増やしてきました。
  • マニトワック(Grove):2022年の GHC85 で、南北アメリカ向けのテレクローラは8機種目。
  • タダノ(Tadano Mantis):2021年の GTC-1600 で、GTCシリーズは7機種に。
  • リンクベルト:250USt(約227t)の TCC-2500。
  • SANY:2017年に55t級の SCC550TB で参入し、2020年には130tの SCC1300TB を発表。

用途も幅広く、各社は風力発電所の補助作業(大型クローラの組立補助、ナセルやハブの移動)、送電線工事、杭打ち・橋梁、他のクレーンの組立補助などを挙げています。広い現場で、荷をつったまま移動する「ピック&キャリー」を活かした使い方が目立ちます。

国内:55〜75t級と小型機が中心

国内メーカーの現行機は、コベルコ建機の TK550G/TK750G、住友重機械建機クレーンの 650TLX、そしてコベルコの小型テレスコ(最大10t)です。主な仕事は、ここまで見てきたように基礎工事と、その相番です。

違いの理由:道路の「サイズ制限」

大きな理由のひとつが、日本の道路の制限です。道路法・車両制限令では、道路を自由に走れる車両の大きさ・重さの上限(一般的制限値)が決まっています。

項目 一般的制限値
幅 2.5m
高さ 3.8m
長さ 12.0m
総重量 20.0t

これを超える車両は、特殊車両の通行許可が必要です(国土交通省 関東地方整備局)。

国産のテレスコクローラも、すでにこの制限を超えています(コベルコ TK550G の最小輸送幅2.99m・最小本体質量30.8t)。それでも各社は、輸送幅3m以内・本体30t前後に収める設計で、日本の道路事情の中でできるだけ運びやすくしています。

一方、海外の大型機は輸送時の寸法・重量がひとまわり大きくなります。

機種 輸送時の幅・重さ(公表値)
コベルコ TK550G(55t) 幅2.99m・本体30.8t
SANY SCC550TB(55t級) 最大輸送幅3.36m・最大単体重量37t
リープヘル LTR 1150(150t) 履帯を外して幅3.0m・38t(履帯付きなら幅3.5m・60t)

同じ55t級でも、国産機のほうが一回りコンパクトに作られているのがわかります。150t級以上になると、日本では何台ものトレーラに分けて運び、許可を取ってもなお、通れる道や置ける現場が限られます。そのクラスの仕事は、組み立て前提のラチスクローラや、道路を自走できるオールテレーンのほうが選ばれやすい、と考えられます。

現場の広さと仕事の中身も違う

  • 海外:風力発電所や送電線のように、広い現場で長い距離を移動しながら作業することが多い。テレスコクローラの「荷をつって走れる」「傾斜地に強い」が活きる。
  • 国内:都市部の狭い現場での基礎工事が中心。「組立がいらない」「後端旋回半径が小さい」「低い空間で作業できる」が重視される。

※ここで挙げた理由は、各社の公表値と道路法の制限値から考えたものです。メーカーが「この理由で大型機を国内に出していない」と公表しているわけではありません。

4つの組み合わせを比べる

得意なこと 主な活躍の場
クローラ×ラチス 大きな能力、長いブーム、重い繰り返し作業 大型建築、プラント、橋梁、風力
クローラ×テレスコ 組立なしですぐ作業、狭い現場、ブーム長さを自在に 基礎工事、地下鉄工事、相番機
ホイール×テレスコ 走ってきてすぐ作業 街なかの建築・設備工事全般
ホイール×ラチス ラチスの力強さ+自走での移動 港湾荷役(日本)、風力発電(欧州)

逆の組み合わせのもう一方、ラチスブームのホイールクレーンは後編で紹介します。

まとめ

  • テレスコブーム式クローラクレーンは「組み立てなくていいクローラ」。狭い現場や基礎工事で、すぐに作業でき、相番機も務められるのが魅力。
  • 国内ではコベルコ建機の TK シリーズ、住友重機械建機クレーンの 650TLX が代表機種。道路の制限と狭い現場に合わせた、輸送幅3m以内の55〜75t級が中心。
  • 海外ではリープヘル・Grove・タダノ(米国)・SANY などが100t超の大型機を次々に出し、風力や送電線の現場で活躍している。
  • 弱点は、同じクラスのラチスクローラに比べて能力・作業半径で不利なこと。「長いブームで大きなものを遠くまで」はラチス、「組み立てずにすぐ、狭い場所で」はテレスコ、という住み分け。

現場の近くで使えるクレーンを探したいときは、クレーンを探すもご利用ください。

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