ホイールクレーンの歴史と最大機種|国産700tから世界4,000tまで

ホイールクレーンの歴史と最大機種 アイキャッチ 機種・用語

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街なかのビル工事、橋の補修、工場の設備入れ替え。現場にタイヤで自走してきて、アウトリガを張り出し、伸び縮みするブームで荷をつる。日本でいちばん身近な移動式クレーンが、ホイールクレーン(ラフター・オルターなど)です。

いまでは700tをつる国産機や、4,000t級の海外機まで登場していますが、出発点は2t吊りの小さなクレーンでした。

この記事では、

  1. 「ホイールクレーン」という言葉の意味
  2. 世界のホイールクレーンの歴史
  3. 日本のホイールクレーンの歴史
  4. 国内メーカーの最大能力機種
  5. 海外メーカーの最大能力機種
  6. 「最大○○t」の数字の見方

の順に紹介します。「クローラクレーンの歴史と最大機種」の姉妹記事です。各メーカーの公式ページへのリンクも載せているので、気になる機種はぜひ一次情報でも確かめてみてください。

※この記事の能力値は、2026年10月時点で各メーカーの公式サイトや発表資料に載っている「最大つり上げ能力(最大定格総荷重)」です。特定の仕様・最小の作業半径での値なので、実際の作業でつれる重さとは違います。作業の可否は、必ずその機械の定格総荷重表と取扱説明書で確認してください。

「ホイールクレーン」とは

この記事での意味:タイヤで走る移動式クレーン

この記事では、ゴムタイヤで走る移動式クレーンをまとめて「ホイールクレーン」と呼びます。クローラ(キャタピラ)ではなくホイールで走るクレーンは、すべてホイールクレーンの仲間です。いま日本の現場で走っているのは、主に次の3つです。

  • ラフテレーンクレーン(ラフター):運転室が1つで、走行もクレーン操作も同じ運転室で行う。小回りがきき、不整地にも強い。国内の主力
  • オールテレーンクレーン(オルター、AT):走行用とクレーン用で運転室が2つ。多軸・全輪操舵で、高速走行と大きな能力を両立する
  • ラチスブームホイールクレーン:タイヤ式の車体に、クローラクレーンのようなラチスブームを載せたもの。数は少ないが、国内ではコベルコ建機が作っている

実際、コベルコ建機は自社の製品分類で、ラフテレーンクレーンとラチスブームホイールクレーンを「ホイールクレーン」としてまとめています。

かつては、トラックの車台にクレーンを載せたトラッククレーンが主役の時代もありましたが、いまはラフターとオルターにほぼ置き換わっています。

それぞれの違いは「ラフター・オールテレーン・クローラクレーンの違い」で詳しく解説しています。

ホイールクレーンの仲間(ラフテレーン・オールテレーン・ラチスブームホイールクレーン)

法令上の「ホイール・クレーン」

じつは「ホイール・クレーン」は、法令にも出てくる言葉です。道路運送車両法施行規則の別表第一では、大型特殊自動車の一つとして「ホイール・クレーン」が挙げられています。

国土交通省の通達(大型特殊自動車の判断基準)では、ホイール・クレーンは、つり上げ作業のための専用の車体にクレーン装置を固定し、次のような条件を満たす自動車とされています(要約)。

  • 全輪操向や油圧による操向など、建設機械らしい走行装置を持つ
  • タイヤは建設車両用・産業車両用など
  • 走行用のエンジンの力でクレーンを動かす
  • 走行用と作業用を兼ねる運転席が1つで、そこからクレーンを操作できる

これにぴったり当てはまるのがラフターです。ラフターで公道を走るのに大型特殊免許が必要なのは、このためです。運転室が2つあるオルターは、車両としての区分がラフターとは別になります。

とはいえ、これはあくまで「車両としての区分」の話です。クレーンとして見れば、オルターもホイールで走るホイールクレーンです。現場や業界で「ホイールクレーン」と言うときは、クローラクレーンに対してタイヤ式のクレーン全般を指す、と覚えておけば十分です。

世界のホイールクレーンの歴史

ホイールクレーンの歩み 年表(世界と日本)

1920〜50年代:トラックにクレーンを載せる

ホイールクレーンの源流は、トラックの車台にクレーンを載せたトラッククレーンです。ドイツのファウン(Faun、現在のタダノ・ファウン)は、1928年に「Bタイプ」と呼ばれるトラッククレーンを発売しています。ドイツのデマーグ(Demag、現在のタダノ・デマーグ)も1950年に2.5t吊りの移動式クレーンを発売しました。

1956年:オールテレーンの祖先

タダノグループの沿革によると、デマーグが1956年に発売した16t吊りの「V 120 Krake」は、世界初のオールテレーンクレーンで、あらゆるATの祖先とされています。

1960年代:アメリカでラフテレーンクレーンが広まる

アメリカでは、グローブ(Grove、現在はマニタウォック傘下)のラフテレーンクレーン「RT-58」(14USトン)が1960年から1978年まで作られ、ベストセラーになりました。大きなタイヤで不整地を走り、運転室1つで走行とクレーン操作をこなすスタイルが、ここから広がっていきます。

1970〜80年代:オールテレーンの本格化

1976年には、グローブがドイツの工場で2軸・18tの「AT180」を作り、これを「現代的なオールテレーンの第1号」とする見方もあります。その後、ファウン、クルップ、リープヘル、デマーグなどドイツのメーカーが多軸のオールテレーンを次々に開発し、能力は100t、200t、それ以上へと伸びていきました。

2000年代〜:1,200tと100mブーム

リープヘル(Liebherr)の「LTM 11200-9.1」は、9軸で最大1,200t。同社が「世界最長のテレスコピックブーム」とする100mのブームを持ち、テレスコブームのクレーンとして長く頂点に立ってきました。

2010年代〜:中国メーカーによる記録更新

2010年代からは、中国メーカーが超大型のホイールクレーンを次々に発表します。XCMG(徐工集団)は2024年、4,000tの能力をうたう「XCA4000」が風力発電所で最初のつり上げを行ったと発表しました(同社発表)。

日本のホイールクレーンの歴史

1950〜60年代:トラッククレーンの国産化

日本のホイールクレーンの歴史は、戦後のトラッククレーンから始まります。

  • 1953年:神戸製鋼所(現在のコベルコ建機の源流)が、国産初のトラッククレーン「10KT」(6t)「20KT」(10t)を発売
  • 1955年:多田野鉄工所(現在のタダノ)が、日本初の油圧式トラッククレーン「OC-2型」(2t吊り)を完成。全国から注文が殺到し、クレーンメーカーとしての第一歩になりました
  • 1959年:加藤製作所が油圧式トラッククレーンの生産を開始
  • 1969年:加藤製作所が「世界最大の全油圧式トラッククレーン」として「NK-750ジャンボ」を発表。同じ年、神戸製鋼所も油圧トラッククレーン「Tシリーズ」(13〜60t)を発売

高度経済成長期の現場を支えたのは、こうした油圧式のトラッククレーンでした。

1970年:日本初のラフテレーンクレーン

  • 1970年:タダノが日本初のラフテレーンクレーン「TR-150」(15t吊り)を発売
  • 1972年:石川島建機(現在のKATO HICOM)が4.8t吊りの「R5型ホイールクレーン」を開発
  • 1980年:加藤製作所がラフテレーンクレーンの生産を開始
  • 1989年:神戸製鋼所が日本初の小型ラフテレーンクレーン「RK70M/RK70」を発売
  • 1991年:神戸製鋼所が「シティコンシャスクレーン」パンサーシリーズを発売

運転室1つで走れて、狭い現場でも小回りがきくラフテレーンクレーンは日本の道路事情や現場に合い、やがて国内の主力になっていきます。タダノのクレヴォ(CREVO)シリーズ(1995年〜)は、いまも現場でよく耳にする名前です。

1980〜2000年代:国産オルターとラチスブームホイールクレーン

  • 1986年:加藤製作所がオールテレーンクレーンの生産を開始
  • 1990年:タダノがドイツのファウンを買収
  • 1992年:タダノがオールテレーンクレーン「AR-1000M」を発売
  • 1998年:タダノが当時日本最大級の550t吊りオールテレーンクレーン「AR-5500M」を発売
  • 2000年:コベルコ建機とタダノが、ホイール式クレーンの生産で業務提携
  • 2001年:コベルコ建機がラチスブームホイールクレーン「MKシリーズ」を発売。走行とクレーン作業で2つのエンジンが必要だった従来のトラッククレーンに対し、1つのエンジンで両方をこなす

2010年代〜:700t機と電動化

  • 2011年:加藤製作所が400t吊りオールテレーンクレーン「KA-4000R」を発売
  • 2013年:タダノが世界最大級のラフテレーンクレーン「GR-1600XL(国内向けGR-1450EX)」を発売
  • 2019年:タダノがドイツのデマーグを買収
  • 2021年:タダノが700t吊りオールテレーンクレーン「AR-7000N」を発売
  • 2023年:タダノが世界初の電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」を発売

電動化の流れは「国内の電動化クレーンまとめ」でも紹介しています。

国内メーカーの最大能力機種

ホイールクレーンの最大つり上げ能力 比較グラフ

いま日本でホイールクレーンを作っているのは、主にタダノ、加藤製作所、コベルコ建機の3社です。各社の公式サイトに載っている現行機種から、いちばん大きなものを抜き出しました。

メーカー 種類 最大機種 最大つり上げ能力
タダノ オルター AR-7000N(7軸) 700t(作業半径2.7m)
タダノ ラフター GR-1450EX 145t(作業半径2.5m)
加藤製作所 オルター KA-4000R(6軸) 400t(作業半径2.5m)
加藤製作所 ラフター SL-850RfⅢ 80t(作業半径2.2m)
コベルコ建機 ラフター パンサー700(RK700-3) 70t(作業半径2.1m)
コベルコ建機 ラチスブームホイール MK650(MK650A) 65t(作業半径3.0m)

※能力値は各社公式サイトの表記(2026年10月時点)。

タダノ「AR-7000N」:国産最大の700t

タダノの国内向けラインアップで最大なのが、オールテレーンクレーンのAR-7000Nです。

  • 最大つり上げ能力700t(作業半径2.7m)
  • 7軸の車体
  • ラフィングジブを付けた最大地上揚程は140.5m

タダノは「日本市場最大の700tオールテレーンクレーン」と紹介しています。1998年の550t機AR-5500Mから、国産機はここまで大きくなりました。その下には、AC 7.450-1、AC 6.300-1などが続きます。

タダノ「GR-1450EX」:世界最大級のラフター

ラフターの最大機種はGR-1450EXで、最大145t(作業半径2.5m)。ブームは6段で最長61.0mです。北米向けの兄弟機GR-1600XL(160USトン)とあわせて、タダノは「世界最大級の吊り上げ能力を誇るラフテレーンクレーン」と位置づけています。

日本の現場でよく見る25t〜70t級のラフターと比べると、まさに別格の大きさです。

加藤製作所「KA-4000R」:400t

加藤製作所(KATO)の最大機種は、オールテレーンクレーンのKA-4000Rで、最大400t(作業半径2.5m)。6軸の専用キャリヤに5段・最長50mのブームを載せています。

ラフターの最大はSL-850RfⅢで、最大80t(作業半径2.2m)です。なお加藤製作所は、2026年8月に220t吊りの新型オールテレーンKA-2200Rの販売開始を発表しています。

コベルコ建機「MK650」:国産のラチスブームホイールクレーン

コベルコ建機のホイールクレーンでいちばん個性的なのが、ラチスブームホイールクレーン「MK650(MK650A)」です。最大65t(作業半径3.0m)、ブーム長さは33.0m。タイヤで走る車体に、クローラクレーンと同じラチスブームを載せています。

2001年に登場したMKシリーズは、それまでのトラッククレーンのように「走行用」と「クレーン用」でエンジンを2つ持つのではなく、1つのエンジンで走行もクレーン作業もこなすのが特徴です。ラチスブームならではの軽さと強さを、自走できる機動力と組み合わせた機械で、海外のリープヘル「LG 1750」(後述)の国産・中型版ともいえる存在です。

ラフターの最大はパンサー700(RK700-3)で、最大70t(作業半径2.1m)です。コベルコ建機は1989年に日本初の小型ラフター「RK70M」を出したメーカーでもあり、狭い都市部の現場向けのコンパクトなラフターを得意としています。

大きな機械は「分けて走る」

400t、700tクラスになると、クレーンを丸ごと載せたまま公道を走ることはできません。たとえばKA-4000Rは、公式サイトで道路法による基本の通行条件を「旋回体別送、台車のみ走行」としています。上の旋回体(クレーン部分)やカウンタウエイト、ブームを別のトレーラで運び、現場で組み立てるのが前提です。

「ホイールクレーンだから自走で来てすぐ作業」とはいかないのが、超大型機の世界です。

海外メーカーの最大能力機種

海外に目を向けると、桁がひとつ変わります。

メーカー(国) 機種 最大つり上げ能力 ブーム
XCMG 徐工(中国) XCA4000 4,000t(同社発表) —
リープヘル Liebherr(ドイツ) LTM 11200-9.1 1,200t テレスコ(最長100m)
リープヘル Liebherr(ドイツ) LG 1750 750t ラチス
タダノ(欧州向け) AC 8.500-1 500t級 テレスコ

※能力値は各社の公式サイト・発表資料(2026年10月時点)。

XCMG「XCA4000」:4,000t

中国のXCMGは2024年3月、XCA4000が中国の風力発電所で最初のつり上げを行ったと発表しました。同社は「世界最大のつり上げ能力と揚程を持つホイールクレーン」とし、160m超の高さまで風車のナセル(約130t)やブレードをつり上げたとしています。

ブームの構成など詳しい仕様は公表資料では限られるため、ここでは同社発表の値として紹介します。

リープヘル「LTM 11200-9.1」:テレスコブームの頂点

ドイツのリープヘルのLTM 11200-9.1は、9軸で最大1,200t。同社が「世界最長」とするテレスコピックブームは100m、最大揚程は188mに達します。1,200tは同社のホイールクレーンで最大の能力です。

リープヘル「LG 1750」:ラチスブームのホイールクレーン

国内のコベルコ建機MK650と同じ「ラチスブームのホイールクレーン」で、世界最大級なのがリープヘルのLG 1750です。8軸のタイヤ式の車体に、クローラクレーンLR 1750と同じ系統のラチスブームを組み合わせた機械で、最大750t、最大揚程は193m。同社は「世界で最も強力なラチスブーム式移動式クレーン」としています。

自走できるホイールクレーンの機動力と、クローラクレーン並みの長いラチスブームを両立させた、ホイールクレーンとクローラクレーンの「いいとこ取り」をねらった機種です。

タダノ「AC 8.500-1」:欧州向けの最大機種

タダノの欧州向けラインアップでは、8軸のAC 8.500-1が最大です。同社は「8軸クレーンで最も短いキャリヤ(17.1m)」とし、コンパクトさを売りにしています。

「最大○○t」の数字の見方

ここまで「最大700t」「最大4,000t」と紹介してきましたが、この数字には注意が必要です。

  • いちばん条件のよいときの値:最大つり上げ能力は、ブームが最短、作業半径が最小、アウトリガ最大張出、カウンタウエイトをすべて載せたときの値です
  • 作業半径が伸びると能力は大きく下がる:AR-7000Nの700tは作業半径2.7mでの値です。ブームを伸ばしたり、遠くへ荷を振ったりすると、つれる重さは大きく減ります
  • アウトリガの張出幅でも変わる:ホイールクレーンは、アウトリガを最大まで張り出せるかどうかで能力が大きく変わります。狭い現場で中間張出になると、荷重表の値も下がります
  • つり具の重さも含む:定格総荷重には、フックやつり具の重さも含まれます

実際の作業でつれるかどうかは、定格総荷重表で、ブームの長さ・作業半径・アウトリガの張出幅の組み合わせごとに確認します。荷重表の読み方は「定格総荷重表の読み方」で解説しています。

ホイールクレーンの最大つり上げ能力が出る条件

まとめ

  • 「ホイールクレーン」は、ラフター・オルター・ラチスブームホイールクレーンなど、ホイールで走るクレーン全般のこと(法令上の車両区分の「ホイール・クレーン」はラフターに当たる)
  • 世界では1920年代のトラッククレーンから始まり、1956年のデマーグ「V 120 Krake」、1960年代のアメリカのラフター、1970年代以降のドイツの多軸オールテレーンへと進化した
  • 日本では1953年の神戸製鋼所「10KT」(国産初のトラッククレーン)、1955年のタダノ「OC-2型」(日本初の油圧式トラッククレーン)、1970年の「TR-150」(日本初のラフター)から発展
  • 国産の最大機種はタダノのAR-7000N(700t)、ラフターではタダノGR-1450EX(145t)。加藤製作所はKA-4000R(400t)、コベルコ建機はラチスブームのMK650(65t)とラフターのパンサー700(70t)
  • 海外ではXCMGのXCA4000(4,000t、同社発表)、リープヘルのLTM 11200-9.1(1,200t)、ラチスブームのLG 1750(750t)が最大級
  • 「最大○○t」はいちばん条件のよいときの値。実際の作業は定格総荷重表で確認する

25t、50tのラフターが毎日の現場を支える一方で、風力発電やプラントの現場では、何十台ものトレーラで運んで組み立てる超大型のホイールクレーンが活躍しています。同じ「タイヤで走るクレーン」でも、その幅の広さがホイールクレーンのおもしろさです。

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