クローラクレーンの歴史と最大機種|国産1,250tから世界最大4,500tまで

クローラクレーンの歴史と最大機種 アイキャッチ 機種・用語

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ビルの鉄骨建方、橋の架設、発電所や工場の大型機器の据え付け。大きな現場で、キャタピラの足回りに長いラチスブームを立てているのがクローラクレーンです。

いまでは1台で1,000tを超える荷をつる機械も珍しくなくなりましたが、最初からそうだったわけではありません。蒸気や機械式の時代から、油圧化、そして超大型化へと、クローラクレーンは100年ほどかけて大きく進化してきました。

この記事では、

  1. 世界のクローラクレーンの歴史
  2. 日本のクローラクレーンの歴史
  3. 国内メーカーの最大能力機種
  4. 海外メーカーの最大能力機種
  5. 「最大○○t」の数字の見方

の順に紹介します。各メーカーの公式ページへのリンクも載せているので、気になる機種はぜひ一次情報でも確かめてみてください。

※この記事の能力値は、2026年10月時点で各メーカーの公式サイトや発表資料に載っている「最大つり上げ能力(最大定格総荷重)」です。特定の仕様・最小の作業半径での値なので、実際の作業でつれる重さとは違います。作業の可否は、必ずその機械の定格総荷重表と取扱説明書で確認してください。

クローラクレーンとは

クローラクレーンは、クローラ(キャタピラ、無限軌道)で走る移動式クレーンです。タイヤで公道を走るラフテレーンクレーン(ラフター)やオールテレーンクレーンと違い、公道は自走できません。そのかわり、

  • 接地面が広く、地盤への力を分散できる
  • 荷をつったまま走れる機種が多い
  • 大型化しやすく、超重量物の据え付けに向く

といった強みがあります。ブームはラチスブームが主流ですが、伸び縮みするテレスコブームの機種もあります。

種類ごとの違いは「ラフター・オールテレーン・クローラクレーンの違い」、ブームの違いは「ラチスブームとテレスコブームの違い」で詳しく解説しています。

世界のクローラクレーンの歴史

クローラクレーンの歩み 年表(世界と日本)

1920年代:車輪からクローラへ

20世紀のはじめ、クレーンの多くは蒸気機関で動き、レールや車輪の上に載っていました。そこに、トラクターなどで実用化が進んでいたクローラ(無限軌道)の足回りが組み合わされていきます。

アメリカのマニタウォック(Manitowoc)は、1925年にクレーン事業を始めました。最初に手がけた「スピードクレーン」は、もとは蒸気で動く4輪の15t機でしたが、ガソリンエンジンを積み、車輪をクローラに替えた改良型(Model 100)が作られます。軟らかい地面でも沈みにくく、現場の中を自分で動けるクローラクレーンの原型の一つです。

1950〜60年代:機械式クローラクレーンの全盛期

戦後の復興と経済成長の時代、クローラクレーンは機械式が主流でした。エンジンの力をクラッチやブレーキ、チェーンを通して巻上げ・起伏・旋回・走行に配る仕組みで、オペレーターは複数のレバーとペダルを使い分けて操作していました。

この時代のクローラ機は、ショベルとクレーンを兼ねるものが多かったのも特徴です。イギリスのラストン・バサイラス(Ruston-Bucyrus)の「22-RB」は1950年から1985年まで作られ、1万台以上が生産されたベストセラーとして知られています。

1970年代〜:全油圧化

1970年代になると、油圧でブームの起伏やウインチを動かすクローラクレーンが登場します。機械式に比べて操作が軽く、微動がしやすいのが利点でした。

初期の油圧機はパワー不足や油漏れ、オーバーヒートなどの課題もありましたが、油圧ポンプの高性能化やブレーキの改良が進み、1980〜90年代にかけて全油圧式が主流になっていきます。

機械式と全油圧式のしくみの違い(概念図)

1990年代〜:超大型化

発電所、石油化学プラント、橋梁、そして近年では洋上風力発電など、つる物がどんどん大きく重くなり、クローラクレーンも超大型化していきます。

超大型機では、本体のカウンタウエイトに加えて、

  • 本体の後ろに別のおもり(スーパーリフト、カウンタウエイト台車など)を置く
  • ブームを後ろから引っぱるマストを立てる
  • クローラを2組、4組と増やす

といった工夫で、つり上げ能力を大きく伸ばしてきました。

超大型クローラクレーンのしくみ(マストとスーパーリフト用カウンタウエイト)

2010年代〜:中国メーカーによる記録更新

2010年代からは、中国メーカーが最大能力の記録を次々と塗り替えます。中国のSANY(三一重工)は、2011年に3,600t、2020年に4,000t、そして2021年に4,500tのクローラクレーンを発表しています(同社発表)。

日本のクローラクレーンの歴史

戦後:ショベルの国産化から

日本でも、クローラクレーンの歴史は建設機械の国産化とともに始まりました。

  • 1930年:神戸製鋼所(現在のコベルコ建機の源流)が、国産初の建設機械といわれる電気ショベル「50K」を製作
  • 1949年:日立が純国産技術でパワーショベル「U05」を完成

当時のショベルは、前の装置を付け替えればクレーンにもなる機械でした。

1950〜60年代:海外との技術提携

高度経済成長期に入ると、各社は欧米メーカーとの技術提携で大型化・高性能化を進めます。

  • 1955年:神戸製鋼所が米国P&H社と技術提携
  • 1963年:住友機械工業(現在の住友重機械工業)が、クローラクレーンとトラッククレーンについて米国リンク・ベルト(Link-Belt)社と技術提携
  • 1964年:神戸製鋼所が「300シリーズ」のクローラクレーンを発売。チェーンによる動力伝達と複合動作のしやすさで、長くトップシェアを誇った

1970〜80年代:日本初の全油圧式クローラクレーン

  • 1971年:日立建機が**日本初の全油圧式クローラクレーン「KH150」**を発売
  • 1975年:住友も全油圧式クローラクレーンの販売を開始
  • 1984年:神戸製鋼所が全油圧式クローラクレーン「7000シリーズ」を発売。それまでの650t機「5650」より本体を小さくし、後ろに遠隔操作できるカウンタウエイト台車をつないだ「7450」などで、輸送しやすさと能力を両立

日立の「KH」シリーズや、コベルコの「7000シリーズ」(のちのマスターテック)は、いまでも機種名として現場で耳にする名前です。

1990年代:800t機と再編の時代

  • 1993年:神戸製鋼所が超大型クローラクレーン「SL13000」(800t)を発売。当時、最大のつり上げ能力を誇った機械です
  • 1994年:日立建機が「KHシリーズ」をフルモデルチェンジした「CXシリーズ」を発売
  • 1999年:コベルコ建機が神戸製鋼所から独立

2000年代〜:日立と住友の統合、1,000t超の国産機

  • 2002年:日立建機と住友重機械工業がクローラクレーン事業を統合し、日立住友重機械建機クレーンが発足
  • 2016年:コベルコ建機の**1,250t機「SL16000J-H」**が、国内のクレーンレンタル会社に引き渡される(独ミュンヘンの展示会bauma 2016)
  • 2018年:日立住友重機械建機クレーンが住友重機械建機クレーン(ブランド名HSC CRANES)に社名変更
  • 2019年:タダノが独デマーグ(Demag)の移動式クレーン事業を買収し、超大型のラチスブームクローラクレーンがタダノグループのラインアップに加わる
  • 2022年:住友重機械建機クレーンが住友重機械工業の100%子会社に

国内メーカーの顔ぶれについては「国内クレーンメーカー6社」でも紹介しています。

国内メーカーの最大能力機種

クローラクレーンの最大つり上げ能力 比較グラフ

それでは、日本のメーカーがつくるクローラクレーンで、いちばん大きな機種はどれでしょうか。各社の公式サイトに載っている現行機種から、最大のものを抜き出しました。

メーカー 最大機種 最大つり上げ能力 ブーム
コベルコ建機 SL16000J-H(SHL仕様) 1,250t(作業半径10m) ラチス
住友重機械建機クレーン 6000SLX 500t(作業半径6.0m) ラチス
タダノ(グループ会社のタダノ・デマーグ製) CC 88.1600-1 1,600t ラチス

※能力値は各社公式サイトの表記(2026年10月時点)。

コベルコ建機「SL16000J-H」:国産最大の1,250t

コベルコ建機の現行ラインアップで最大なのがSL16000J / SL16000J-Hです。

  • SL16000J(標準仕様):最大1,000t(作業半径5.4m)
  • SL16000J-H(SHL仕様):最大1,250t(作業半径10m)、ロングSHL仕様ではメインブーム最長150m

SHL仕様では、本体の後ろに**総重量500tのカウンタウエイト台車(またはパレットウエイト)**を組み合わせて能力を引き上げます。1993年の800t機SL13000から、国産機はここまで大きくなりました。

その下には、500t級のSL6000J、200t級のマスターテック7200Gなどが続きます。テレスコブームのクローラクレーンでは、TK750Gシリーズ(75t)が最大です。

住友重機械建機クレーン「6000SLX」:500t

住友重機械建機クレーン(HSC CRANES)の現行機種で最大なのは6000SLXで、最大500t(作業半径6.0m)です。

国内でよく見かけるSCX-3シリーズの最大はSCX3500-3(350t)。後方小旋回仕様を選べるなど、大型機でも狭い現場で使いやすいように工夫されています。

テレスコブームのクローラクレーンでは、**650TLX(65t)**が最大です。

タダノ「CC 88.1600-1」:日本企業グループの最大機種

ラフターで有名なタダノは、2019年に買収したドイツの旧デマーグの工場で、超大型のラチスブームクローラクレーンを作っています。その最大機種がCC 88.1600-1で、最大1,600t、最大揚程は239mに達します。

日本のメーカーではありますが、国内向けというよりは海外の大型プロジェクト向けの機械です。

日本国内で働く最大級のクローラクレーン

日本の現場で見られる最大級のクローラクレーンは、国産のSL16000J-H(1,250t)クラスです。SL16000J-Hは日本市場向けの機種として紹介されています。

また、日本に本社を置く重量物運搬・揚重会社のDenzai社は、リープヘルの1,350t機「LR 11350」と2,500t機「LR 12500-1.0」を所有しています。LR 12500-1.0は日本とアジア太平洋地域で初めての導入で、2台目の発注も報じられています。日本企業が所有するクローラクレーンとしては最大級です。

実際に日本でどの会社がどんなクレーンを持っているかは、世界のクレーン保有ランキング「IC100に入った日本企業まとめ」も参考になります。

海外メーカーの最大能力機種

海外に目を向けると、桁がひとつ変わります。

メーカー(国) 機種 最大つり上げ能力
SANY 三一重工(中国) SCC9800TM ※ 4,500t
XCMG 徐工(中国) XGC88000 4,000t
リープヘル Liebherr(ドイツ) LR 13000 3,000t
リープヘル Liebherr(ドイツ) LR 12500-1.0 2,500t
リープヘル Liebherr(ドイツ) LR 11350 1,350t

※SANYの発表資料の表記。海外メディアでは「SCC98000TM」と書かれることもあります。能力値は各社の公式サイト・発表資料(2026年10月時点)。

SANY:4,500tの世界記録

中国のSANY(三一重工)は、2021年10月に最大つり上げ能力4,500tのクローラクレーンを顧客に引き渡しました。最大負荷モーメントは98,000t·m超。クローラは4本、エンジンは8基、2本のブームを組み合わせた到達高さは216m、機械全体が占める面積はバスケットボールコート約10面分(約4,200m²)にもなります。

同社は「移動式クレーンとして史上最大のつり上げ能力」と発表しています。

XCMG「XGC88000」:4,000t

同じく中国のXCMG(徐工集団)のXGC88000は、最大4,000t。2013年に市場投入され、2021年には製油所の建設で2,600tの機器の据え付けを行ったと発表されています。

リープヘル「LR 13000」:3,000t

ドイツのリープヘル(Liebherr)のLR 13000は、最大3,000t、最大揚程は236m。同社は「世界で最も強力なクローラクレーン」の一つと位置づけ、原子力・火力発電所などの超重量物の据え付けを主な用途としています。部材はそれぞれ70t以下に分けられ、世界中へ比較的安く運べるよう設計されています。

その下にはLR 12500-1.0(2,500t)、**LR 11350(1,350t)**が続きます。LR 12500-1.0は、洋上風力発電の部材や石油化学プラント向けの需要に応えて開発された機種です。

参考:リングクレーンは「クローラクレーン」ではない

世界最大級のクレーンというと、ベルギーのサレンス(Sarens)やオランダのマムート(Mammoet)が持つリングクレーン(数千t〜1万t級)が話題になることがあります。これはクレーンを巨大なリング状のレールの上に組み立てて使うもので、クローラで走るわけではありません。この記事では、クローラで自走できるものだけを比べています。

「最大○○t」の数字の見方

ここまで「最大1,250t」「最大4,500t」と紹介してきましたが、この数字には注意が必要です。

  • いちばん条件のよいときの値:最大つり上げ能力は、ブームが短く、作業半径がいちばん小さく、追加のおもりをすべて付けたときの値です
  • 作業半径が伸びると能力は大きく下がる:たとえばSL16000J-Hの1,250tは作業半径10mでの値です。ブームを長くしたり、遠くへ荷を振ったりすると、つれる重さは大きく減ります
  • 仕様によって値が違う:同じSL16000Jでも、標準仕様は1,000t、SHL仕様は1,250tです
  • つり具の重さも含む:定格総荷重には、フックやつり具の重さも含まれます

実際の作業でつれるかどうかは、定格総荷重表で、ブームの長さと作業半径の組み合わせごとに確認します。荷重表の読み方は「定格総荷重表の読み方」で解説しています。

最大つり上げ能力は最も条件のよいときの値(作業半径による違い)

まとめ

  • クローラクレーンは、1920年代に車輪からクローラへ移り、機械式の時代を経て、1970年代から全油圧化が進んだ
  • 日本では戦後のショベル国産化から始まり、1971年に日立が日本初の全油圧式クローラクレーン「KH150」を発売。1993年にはコベルコの800t機「SL13000」が登場した
  • 国産の最大機種はコベルコ建機のSL16000J-H(1,250t)。住友重機械建機クレーンは6000SLX(500t)、タダノグループはCC 88.1600-1(1,600t)
  • 海外ではSANYの4,500t機、XCMGの4,000t機、リープヘルの3,000t機LR 13000が最大級
  • 「最大○○t」はいちばん条件のよいときの値。実際の作業は定格総荷重表で確認する

大きなクローラクレーンは、組み立てるだけでも補助クレーンと広いヤード、何十台ものトレーラが必要です。それでも「1回でつれる」ことが工期と安全を大きく左右するため、プラントや風力発電の現場では超大型機がますます求められています。

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