中国クレーンメーカーは日本に来るのか?SANY・XCMG・ズームライオンの狙いと注目機種を予想

中国クレーンメーカーは日本に来るのか? 注目機種と戦略を予想 メーカー

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SANY(三一重工)、XCMG(徐工集団)、ズームライオン(中聯重科)。世界の建設機械メーカー売上ランキングでは、3社とも上位の常連です。クレーンでも、SANYは4,500t級という世界最大級のクローラクレーンを作っています。

ところが日本の現場では、中国製の移動式クレーンをほとんど見かけません。3社とも日本法人はすでにあるのに、です。

この記事では、

  1. いま分かっていること(各社の日本法人と、日本向けに紹介している機種)
  2. なぜ日本では広がっていないのか
  3. 【予想】日本に入ってきそうな機種
  4. 【予想】各社の戦略と、今後のシナリオ

の順に見ていきます。前半は公式サイトなどで確認できた事実、後半は運営者の予想です。予想の部分は見出しに【予想】と付けています。

※この記事の情報は2026年10月時点のものです。機種名と能力値は各社の日本語公式サイトに載っている値で、実際の作業能力は条件によって大きく変わります。

いま分かっていること

3社の日本法人と取扱製品

メーカー日本法人所在地日本向けに紹介している主な製品移動式クレーン
SANY(三一)三一日本株式会社東京都千代田区クレーン、ショベル、ホイールローダー、杭打ち機あり
XCMG(徐工)徐工日本株式会社(2024年7月設立)東京都中央区港湾荷役機器、電動ショベル、ホイールローダー、高所作業車方針のみ
ズームライオン(中聯)ズームライオン・ジャパン株式会社福島県会津若松市コンクリートポンプ車、高所作業車、フォークリフトなし

ひと口に「中国メーカーの日本進出」といっても、移動式クレーンに本気度が見えるのは、いまのところSANYだけです。

SANY:日本語サイトに大型クローラとオールテレーン

三一日本の公式サイトには、次のクレーンが日本語で紹介されています。

区分型式公式サイトの表記
クローラクレーンSCE1350A最大吊上モーメント 668t·m、ブーム最長76m
クローラクレーンSCE8000A最大吊上モーメント 12,000t·m(800t級)
電気式クローラクレーンSCE800TB-EV最大吊上重量 80t、ブーム最長47m(テレスコブーム式)
電気式クローラクレーンSCE1350A-EV最大吊上重量 135t
オールテレーンクレーンSAC18000T最大吊上能力 1,800t
オールテレーンクレーンSAC24000T最大吊上能力 2,400t

SCE8000Aは「欧州・米国・日本の市場向けに製造されたハイエンド製品」と紹介されています。一方、ラフターはありません。また「お客様事例」に並ぶのは台湾や韓国の例で、日本国内の事例はまだ載っていません。

クレーン以外では、SANYは2011年の福島第一原発事故のときに、62mブームのコンクリートポンプ車を原子炉への放水用に提供しています。2021年には東京港向けに空コンテナハンドラー(港湾荷役機)を納めました。

XCMG:港湾機器から参入し、「大型クレーン」も視野に

XCMGは2024年7月に日本法人「徐工日本」を設立しました。日本海事新聞(2025年1月8日)によると、まずリーチスタッカーなどの港湾荷役機器から参入しています。そのうえで、「日本メーカーが対応していない大型クレーン」も扱う方針と、建機・クレーンの合弁による日本生産の検討を明らかにしています。発注から納入まで約3か月という短納期も強みとして挙げています。

ただ、2025年6月の建設・測量展(CSPI-EXPO)に出したのは、電動ショベル、電動ホイールローダー、高所作業車でした。クレーンはまだ並んでいません。

ズームライオン:日本ではクレーンを扱っていない

ズームライオンは本国ではタワークレーンや大型クローラクレーンに強いメーカーです。しかし日本法人の取扱は、コンクリートポンプ車、高所作業車、フォークリフトなどで、クレーンは紹介されていません。

なぜ日本では中国製クレーンが広がっていないのか

壁① 日本の構造規格と使用検査

つり上げ荷重3t以上の移動式クレーンは、労働安全衛生法の「特定機械」です。海外で作られたクレーンを日本で使うには、輸入した人(または外国の製造者)が使用検査を受け、移動式クレーン構造規格に合っていることを示さなければなりません(安衛法第38条、クレーン等安全規則第57条)。

申請には明細書、組立図、強度計算書が必要です。欧州や中国の基準で設計された機械でも、日本の基準に合わせて書類を作り直す手間がかかります。検査や届出の流れは「移動式クレーンの検査と届出」で詳しく解説しています。

壁② 日本の主役「ラフター」は日本独自の機械

日本の移動式クレーンの主役はラフターです。国内の年間出荷はおよそ1,300台。タダノの社長は経済誌のインタビューで「ラフテレーンクレーンが公道を走れるのは日本だけ」と話しています(ダイヤモンド・オンライン 2025年3月26日)。

日本の道路は幅や重さの制限が厳しいため、国内メーカーはその枠に収まるように設計しています。中国メーカーには、この日本サイズのラフターがありません。 台数がいちばん多い市場に、商品がないわけです。違いは「ラフター・オールテレーン・クローラの違い」もあわせてどうぞ。

壁③ アフターサービスと「売るときの値段」

クレーンは何十年も使い、最後は中古として売ります。日本のクレーン会社にとっては、

  • 故障したときにすぐ来てくれるサービス網
  • 部品がすぐ届くか
  • 手放すときに値段がつくか(日本製の中古クレーンは海外で人気があります)

が、買うときの値段と同じくらい大切です。この実績がまだない点は、新しく入ってくるメーカーにとって大きな壁です。

【予想】日本に入ってきそうな機種

ここからは運営者の予想です。可能性の高さを★で示します(★★★が高い)。

【予想】日本に入ってきそうな機種

★★★ 電動のテレスコクローラ(SCE800TB-EV)

いちばん可能性が高いと見ているのが、電動のテレスコブーム式クローラクレーンです。SANYのSCE800TB-EVは、最大吊上重量80t、ブーム最長47mのテレスコクローラを電動で動かす機械です。

  • 都市部の夜間工事やトンネル付近など、騒音と排ガスを抑えたい現場がある
  • ゼネコン各社が「現場の脱炭素」を掲げていて、電動建機を使うこと自体が評価につながる
  • 国内メーカーの電動クローラはまだ機種が少なく、選択肢が少ないところに入りこめる

ブームの組立がいらないテレスコクローラを電動にした機械なので、狭くて静かさが求められる都市部の現場とは特に相性がいいはずです。ラチスブームの電動機(SCE1350A-EV、135t)も日本語サイトに載っています。テレスコクローラの魅力は「テレスコブームのクローラクレーンの魅力」、国内の電動化の流れは「国内の電動化クレーンまとめ」で紹介しています。

★★☆ 800t超の超大型クローラクレーン(SCE8000A など)

日本メーカーのクローラクレーンの最大機は、コベルコ建機の1,250t級(SL16000J-H)です。それより大きな機械が必要なときは、これまでもリープヘルなどの海外機が使われてきました(「クローラクレーンの歴史と最大機種」)。

風力発電所の建設や大型プラントの工事では、こうした超大型機が求められます。もともと海外機を使う分野なので、「海外機の選択肢の一つ」として中国機が入る余地はあると見ています。台数は少なくても、1台の金額が大きく、宣伝効果も大きい分野です。

★☆☆ 超大型オールテレーン(SAC18000T・SAC24000T)

日本最大のオールテレーンは700t級です(「ホイールクレーンの歴史と最大機種」)。2,000t級を超えるオールテレーンは、日本の道路を走るには大きすぎます。日本語サイトに載ってはいるものの、実際に日本で使われる場面はかなり限られると見ています。

★☆☆ 日本向けラフター

「本命」の市場ですが、短期的な可能性は低いと見ています。日本の道路の制限に合わせた機械を一から設計する必要があり、国内3社(タダノ、加藤製作所、コベルコ建機)の牙城でもあります。ただ、XCMGが話している「合弁による日本生産」が実現すれば、話は変わってきます。

【予想】各社の戦略

SANY:「電動」と「超大型」の二本立て

日本語サイトの機種の並びを見ると、SANYの狙いは「国内メーカーが手薄なところを突く」ことだと読めます。電動クローラと800t超のクローラは、まさにその隙間です。

売り方は、自社で一台ずつ売るより、大手のレンタル会社やクレーン会社と組んで、まず数台を使ってもらう形になると予想します。最初の1台の実績が、その後の広がりを大きく左右するはずです。

XCMG:港湾機器で足場を固めてから、クレーンへ

XCMGは、港湾機器で販売店や整備の体制を作るところから始めています。港湾機器もクレーンも「重いものを持ち上げる機械」で、整備の考え方が近い部分もあります。サービス網ができたところで大型クレーンを投入する、という順番を踏むのではないかと見ています。

注目したいのは合弁による日本生産です。日本で作れば、日本の規格に合わせやすく、「日本製」として扱える面も出てきます。実現すれば、中国メーカーの日本進出でいちばん大きなニュースになるでしょう。

ズームライオン:当面はポンプ車と高所作業車

ズームライオンは、コンクリートポンプ車や高所作業車で日本の販売網を広げている段階です。クレーンの投入は、この3社の中ではいちばん後になると予想します。もし来るなら、本国で得意なタワークレーンや大型クローラからでしょう。

【予想】今後のシナリオ

時期はぴたりと当てられるものではないので、「起こりうる幅」と「本命の時期」に分けて年表にしました。

【予想】中国メーカーの日本進出 年表
予想起こりうる幅本命可能性
電動テレスコクローラ(80t級)の実機展示・試験導入2027〜2028年2027年★★★
XCMGが日本でクレーンを正式発売2027年後半〜2029年2028年★★☆
800t超の超大型クローラが風力・プラントの現場に登場2027年後半〜2030年2028〜2029年★★☆
国内での採用が少しずつ増え「選択肢の一つ」に2028年後半〜2031年2029〜2030年★★☆
合弁などで日本生産2029年〜2032年以降2030〜2031年★☆☆
日本向けラフター2031年以降?―★☆☆

もちろん、中国製の機械に対する発注者や元請の見方、国際情勢(米国では中国製の港湾クレーンへの懸念が議論されています)によって、予想は大きく変わります。

まとめ

  • SANY、XCMG、ズームライオンの3社とも日本法人はすでにある。移動式クレーンを日本向けに紹介しているのはSANYだけ。
  • 日本では構造規格と使用検査、日本独自のラフター、アフターサービスと中古価値が大きな壁になっている。
  • 【予想】入ってくるとすれば、まず電動クローラと800t超の超大型クローラ。ラフターは当面、国内メーカーの独壇場。
  • 【予想】XCMGが検討している合弁による日本生産が実現するかどうかが、いちばんの注目点。

ここまでが運営者の予想です。あなたはどう予想しますか? 「この機種なら日本でも使ってみたい」「いや、日本では広がらない」「現場でもう見かけた」など、ぜひコメント欄で教えてください。

動きがあれば、この記事を更新していきます。

参考

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